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第882回 粵港澳大湾区発展プラン ―その1―
(2019年8月22日)
2019年2月18日、<粵港澳大湾区発展プラン綱要>(グレーターベイエリア構想)全文が国務院から配布されました。それによると、大湾区は、香港・マカオ両特別行政区と珠江デルタに位置する広東省の9つの都市(広州・深圳・仏山・東莞・恵州・中山・江門・珠海・肇慶)から成る、総面積5.6万平方キロ・総人口約7000万人・経済総量10兆元(2017年末)に達する巨大ベイエリア構想で、ニューヨーク、サンフランシスコ、東京といった世界の経済と技術革新をリードする主要湾岸地域に匹敵するエリアに育成しようというものです。この地域は、改革開放初期の1980年に広東省と福建省にまたがる4つの経済特別区(深圳・珠海・汕頭・厦門)が建設されたのをきっかけに、90年代を以降「珠江デルタ経済圏」として発展、更に、長江以南を包含する広域経済圏、「汎珠江デルタ経済圏」にも発展し、その役割分担の中で本来の珠江デルタ経済圏はその中核となり、以後、中国の急速な経済発展の先端モデル地区としての機能を果たしてきました。その一方で、珠江デルタ経済圏の各都市がその経済的発展により、包含する二つの特別行政区、香港・マカオとの塩分濃度差を縮め、将来的に香港・マカオを祖国の内懐にソフトランディングさせることで、台湾の平和的統一への機運をも高めようという、遠大な政治的意図も包含しています。ちなみに2月19日付人民日報はこの構想を「一国二制度事業の発展を推進する新しい実践」と表現しています。
周知の如く、既に深圳はGDPで香港を抜き、ドローンをはじめとする先端技術集積地としてその名を知られていますが、大湾区構想スタートのきっかけとなったのが前海です。
2012年12月、総書記に就任したばかりの習近平は、年末に開催される重要な中央経済工作会議の日程をずらし、1992年の鄧小平の南巡に倣ってまず前海を訪問、そこで「広東は香港・マカオと協力して、総合的競争力を持つ世界的な都市群を形成すべきだ」とコメントしましたが、2018年にもふたたび同地を訪れ、大湾区構想を高らかにぶち上げました。この間、既に2015年に中国政府は「一帯一路」発展構想の中で大湾区構想に言及し、2017年には国家発展改革委員会と広東省・香港・マカオ各行政府が<粵港澳協力深化と大湾区建設推進の枠組み協議>に調印、同年秋の19全大会報告にも明記されました。
では、その構想の内容はどのようなものでしょうか。それは次回に。