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第892回 民生の向上と公共サービスの改善-その1-
(2019年10月31日)
2010年代は、前半のバブル期を経て後半にさしかかると、2021年目標である貧困撲滅達成を目指し、更にまた、金銭的な豊かさの追求に飽き足らない、文化や心の豊かさへの追及も相俟って、民生の向上、特に公共サービスの充実が大きな課題としてクローズアップされるようになりました。今から3年半ほど前、第13次5か年計画(2016-2020)スタートの年、2016年春の全人代に際しての記事(人民日報)で、第12次5か年計画最終年の2015年の総括として、民生10大項目が掲げられました。まず、それを概観してみましょう。
①二人っ子許容政策:18期5中全会で夫婦一組に2人まで許容。②養老改革:二本立て制度を廃止、月平均支給額2200元以上、養老保険参加者8.42億人に。③最低生活保障:都市住民月平均支給額基準450.1元、農村住民年平均支給額基準3182.3元に。④医療改革:“健康中国”が18期5中全会のスローガンに。県レベルの医療体制の改革・充実を推進、医療保険参加者13億人以上。⑤教育の充実:大学入試科目の改革と農村貧困家庭子女の大学入学枠拡大、都市と農村の義務教育経費均等化。⑥戸籍制度改革:<居住証暫定実施条例>により、全国に居住制度を普及、都市の基本公共サービスが都市常住人口全体をカバー。⑦住宅保障:新築及び旧式住居の改築を推進、全国で1.54兆元の資金を消化。⑧通信キャリア費用の減額:三大キャリア(中国移動・中国聯通・中国電信)が30%以上の減額に同意。⑨交通インフラ整備:鉄道が12万キロ、農村自動車道路が397万キロ突破、96%の県城を二級道路以上が貫通、29の省レベルをETCが網羅、新たに全国7974の農村にバス路線設置。⑩行政手続きにおける公共サービスの改革:法律的根拠のない証明書・押印の廃止、一括窓口の設置、住民身分証紛失に関する届け出と再発行の本籍地以外での手続き容認。
こういった政策の裏付けとなっているのが“共享”「豊かな暮らしをシェアしよう」という考え方で、そのために克服しなければならない3つの重要ポイントが、(1)貧困人口の削減(2)民生の改善 (3)公共サービスの均等化 であったわけです。では、こういった成果を踏まえて現行の第13次5か年計画ではどんな政策が展開されたのでしょうか。