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第895回 中国と中東-その2-
(2019年11月21日)
<アラブ諸国に対する中国の政策文書>の前言では「中国とアラブ諸国の友好交流の歴史は長く、2000年余りの間、陸と海のシルクロードは中国とアラブという二大民族を結び付けてきた」「1956-1990年の間に中国は全部で22のアラブ世界の国々と外交関係を樹立、アラブ民族の解放運動を断固支持してきた」「2010年、中国とアラブ諸国は全面協力・共同発展という戦略的協力関係を樹立、その協力関係は全面的にアプグレードされた新しい段階に入った」と述べています。2016年の習近平国家主席の歴訪に対し、アラブ三か国は、自ら中国の“一帯一路”政策における、アフリカおよびヨーロッパへの支点としての役割を競って買って出、各国とも『“一帯一路”共同構築に関する備忘録』に署名、エジプト21、イラン17、サウジアラビアは14の協力文書を、更にサウジは『インターネットシルクロード』に関する備忘録をも取り交わしました。その内容は、経済貿易関係の他に、エネルギー・金融・通信・航空宇宙・気候変化など多方面に及びました。この間、人民日報に掲載された関連記事が25本余りに達したことは、中国側の思い入れを端的に表しています。その後、2016年~2017年にかけて、中国はモロッコ、トルコ、イスラエル、パレスティナ、ヨルダン、オマーン、シリア、カタール、アラブ首長国連邦、イラク、アフガニスタンなどとも指導者の相互訪問などを通して関係を深め、多くのプロジェクトを展開、中国企業の進出も進めました。2017年8月5日の人民日報は、中国の2016年の中東地区に対する投資総額が295憶元に達し、同地区に対する外国投資のトップ(31.9%)を占めた、と報じました。その中には、約10憶ドルが投資され、70もの企業が参加した中国-エジプトスエズ経済貿易協力区や、10社の進出が決まった中国-オマーン産業パークなども含まれましたし、その後もイスラエルのライトレール建設やシリアの国土再建に対する援助など様々なプロジェクトが展開されました。
中国とアラブ諸国との関係はとかくエネルギー確保の面が強調されますが、決して経済関係にのみ止まるものではありません。混迷の度を増す国際関係の中で、両者が政治的協力を深めるのは、パレスティナ問題の解決も含めた中東紛争に対するアメリカの関与が念頭にあることは自明の理でしょう。