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第896回 最近の漁業
(2019年11月28日)
1990年代の高度経済成長の中で、乱獲と環境汚染により、中国の漁業は壊滅的様相を呈しました。違法な漁具の横行や無許可漁船“三無漁船”の猖獗で東シナ海では魚群の姿が消えました。2011-15年の第12次5カ年計画では生産量が年平均10.10%成長を遂げた半面、「減量しつつ増収を図る」、「環境に配慮した発展」、「漁民を豊かにする」、「生産品の質を向上させる」ことが第13次5カ年計画(2016-20年)の重要課題として突きつけられました。そこでまず行われたのが、違法な漁具や“三無漁船”の取り締まりで、2016年6月までに全国で違法漁具60万張を、2017年1年間に全国で“三無漁船”3万隻を取り締まりましたが、“三無漁船”の横行は政府の一方的な漁船数削減とその補償方法にも原因があり、そうしなければ生活できない状況に追い込んだことも見逃せません。
漁業の再生には環境の再生が不可欠。そこで政府が取り組んだのが休漁と禁漁。2017年、政府は2020年を目標にエンジン付き海洋漁船や漁獲量の規制枠を提示するとともに、夏季の禁漁開始時期を全国統一で1か月繰り上げて5月1日からとし、解禁日は最も遅い地域で9月16日としました。長江流域では既に2003年から禁漁期間が設けられ、その効果が顕著であったため、第13次5カ年計画に入ると更に期間を延長、淮河や湘河もこれに組み入れました。2019年1月、政府は2020年末までに長江流域は通年禁漁にする、と発表しています。黄河流域でも2018年から禁漁期間が設けられ、この傾向は全国の河川や湖沼へと急速に拡大しています。漁業の再生には稚魚などの放流や育成も欠かせませんが、これはかなり早くから始まっており、第12次5カ年計画中にすでに40憶元を投入して1200億匹を放流、その後も6月6日を全国放流日とするなど、年々活動を拡大しています。もう一つの取り組みが養殖の推進で、近海では人工漁礁を設置したり、生け簀養殖が盛んにおこなわれるようになりました。2017年には世界最大のスマート海上養殖装置も開発されています。
2017年上半期、中国の漁獲量は前年同期比15.79%(うち海洋18.05%)減少し、その分、養殖量が着実に増加しました。年々急速に発展しつつある遠洋漁業も、2016年から漁船数をゼロ成長にし、今後は3000隻以内に抑えるという数値目標を掲げています。一方、無公害養殖も年々盛んになっており、薬臭かった淡水魚の料理が食卓から姿を消しつつあります。