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第900回 中国映画界最近の話題-その2-

(2019年12月26日)

2019年の中国映画界の特徴といえば、前述の<流浪地球>に代表されるSFモノで、2019年はそういった意味で中国映画のSF元年とも言われています。勿論、それ以前にも中国にSF映画はあり、1960年代の『小太陽』(王敏生)などはその走りと言えましょうが、改革開放が始まり、『芙蓉鎮』などが制作された映画ブームの中で、SFモノにはこれといった動きはなく、80年代後期の『霹靂貝貝』の登場を待たねばなりませんでした。しかし、それも、2000年代には、ハリウッドからの超大型SF映画の流入に気圧され、中国製SF映画は長い低迷期に入りました。それゆえ、今回の<流浪地球>が注目を浴びているのです。       
劉慈欣のSF小説は海外でも注目を浴びています。先頃、彼の小説『三体』(第一部)が日本の早川書房から出版されましたが、発売初日に初版1万冊を完売、一週間で10回も増刷されました。『三体』は世界の19の言語に翻訳されており、2019年8月時点で中国語版を含めた全販売冊数は2100万冊、海外販売数150万冊(英語版100万冊)に上っています。中国の作家たちがこれにつづく優れたSF小説を継続して創作し、それがSF映画の制作につながれば、中国版SF映画がハリウッドのそれに迫るのも夢ではありません。       
中国映画界に関わるもう一つの注目すべき動きは、習近平政権が、その統治において映画の果たす役割を積極的に利用しようという動きが顕著になってきたことでしょう。2017年3月に施行された<電影産業促進法>は映画産業の発展を後押しするものですが、これに関して、同法の起草に参画した全人代法律委員会の李連寧副主任委員は、同年2月17日に行われた座談会で、「『重大なテーマ、あるいは国家の安全・外交・民族・宗教・軍事などの方面に関わる題材は国の関連法に基づいて審査に送られる。映画は、憲法に違反し、国家に危害を及ぼし、民族の怨念を扇動し、国の宗教政策を破壊し、社会のモラルに害を及ぼす内容を撮影してはならない』という同法の規定は映画産業の発展に法律的な根拠と保障を与えたものであり、国家の安全と社会主義の核心的価値観のボトムラインを法に依拠して守ったものである。これが同法の鮮明な特徴である」と述べています。同法では更に、「国産映画の放映時間は映画年間放映総時間の3分の2を下回ってはならず、更に映画館は集客に有利な時間に国産映画を放映しなければならない」と、露骨な国産擁護政策も打ち出しています。

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