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第920回 中露関係再起動

(2020年5月21日)

5月20日の日経新聞に、<ロシア、中国と協業強化-宇宙・資源開発、米に対抗>という記事が掲載されました。その冒頭は「ロシアが中国との『戦略的パートナーシップ』の更なる強化に動いている。月面基地建設での協力や天然ガスを中国に輸出する新たなパイプライン計画など宇宙や資源、軍事で大型事業が浮上する」という書き出しで、「ロシアの中国シフトに拍車がかかれば、中ロと米国の対立の構図が鮮明になりかねない」と続けています。       
2019年は中ロ国交70周年に当たり、同年6月には習近平国家主席がロシアを公式訪問、両国の友好関係は大きく盛り上がりました。周知の如く、中国と旧ソ連は、コミンテルンによる中国共産革命の指導、1950年代初頭の中ソ蜜月時代、その後の中ソ論争を経験するなどした後、1992年以降は友好関係を維持、21世紀初頭からは、その表面的な友好と実質的な利害関係に時には若干の乖離があったものの、上海協力機構の設立や一帯一路を通して協力関係を維持してきました。その三つの成果が、①戦略的協力パートナーシップの確立、②中ソ善隣友好協力条約の締結、③国境の最終確定、と言えましょう。   
近年の成果は政治的な側面から経済的な側面へと一層広がっています。2018年、両国の貿易額は1000億ドルに達し、協力分野も多岐にわたり、ファーウェイ、アリババ、長城自動車といった中国企業も続々とロシアに進出しました。こうした動きに拍車をかけたのが、アメリカ、トランプ大統領の登場で、2017年以降、両国が急速に実質的提携強化へと向かう契機になりました。同年夏の人民日報に、<中露関係を新たな高みに>、<中露関係により大きな枠組みを>といった見出しが躍ったのは、中ロ関係を、単なる一帯一路計画の重要組成部分として捉えるだけでなく、アメリカに対して中ロがタッグを組む、という国際関係再構築の新しいコンセプトの一環として見る事の証左に他なりません。   
2018年は両国の地方協力年と位置づけられました。2017年以降、両国の地方協力はその成果を着実に挙げつつあり、長江とボルガ川、東北地方と極東という二つの協力メカニズムの構築はその典型と言えましょう。降って湧いた新型コロナは、アメリカの制裁に悩む中ロ両国の経済に対して、文字通りのダブルパンチとなっています。この事が今後の中ロ関係をどのような方向に導くのか、世界情勢に大変革をもたらす契機ともなりかねないでしょう。   

次回は5月28日の更新予定 テーマは<税制の諸改革>です。

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