企業向け中国語研修をリードするGLOVA China

ビジネスコラム|現代中国放大鏡

トップ > 現代中国放大鏡

Last Update:

第926回 2020年春の全人代-その3-

(2020年7月2日)

次に注目すべきは、強力なイノベーション支援政策です。中国企業の研究投資額は近年大幅に改善され、成果も生まれていますが、更にその投入を増やさせるべく、国の重点実験室システムを改組して国家実験室の建設を速める方針を打ち出しました。また、国際的な科学技術協力を推進するとともに、知財権保護を強化するとも謳っています。       
経済回復に内需の振興は不可欠。その具体的な措置として、オンラインとオフラインを結合させた生活消費の活性化、高齢者・幼児介護福祉施設の充実、農村ECによる農村消費の喚起などが挙げられました。公共投資は依然、経済回復の主要手段ですが、「苦しいときは公共投資」の後遺症を考慮し、インフラ投資の目標と項目を明確化、先端科学技術分野(新世代情報ネットワーク、5Gの応用、電気自動車用充電ステーション、新エネルギー自動車)への投入と、新しい都市建設(旧式家屋の改造、エレベーターの設置、社区すなわち地域コミュニティにおける食事の提供や環境衛生サービス)などが明記されました。その一方、従来型インフラ整備項目である鉄道建設になお1000億元が投入されますが、鉄道はそろそろ飽和点に達しており、投資を選別しないと、赤字路線の維持が財政負担になってくるでしょう。   
政治報告では、地域発展戦略にも言及しています。西部大開発、東北の振興、中部地区の離陸、東部地区の先行発展、という従来からのプランに加え、京津冀(北京・天津・河北省)協同発展計画、粤港澳(広東省・香港・マカオ)大湾区建設プラン、長江デルタ一体化プラン、長江経済ベルトプラン、黄河流域生態保護兼高度発展計画、成渝(成都・重慶)二都経済圏の建設が列挙されています。いずれも既にスタートしているものではありますが、それぞれのプランを時系列的に眺めると、今後の地域発展の方向性が浮き彫りにされます。   
この後、李首相は貧困撲滅問題に触れたのち、対外開放について以下の如く言及しています。まず提起されたのが、産業チェーンとサプライチェーンの確保です。ここには対米貿易摩擦の影響が色濃く滲み出ており、輸出信用保険の拡大とともに、輸出製品の国内消費への転換が特記されています。また、輸入博覧会の開催による輸入促進も対米黒字減らしの一環と言えます。更に自由貿易区を利用した外資の国内投資の推進、一帯一路を利用した国外への積極投資の推進も政策の柱として提示されています。   

次回は7月9日の更新予定 テーマは<ネットビジネスの発展とライブコマース>です。

バックナンバー一覧はこちら

三瀦先生のコラム