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第928回 ネットビジネスの発展-その2-
(2020年7月16日)
ネット新時代に入り、2016年頃大きく取り上げられたのが懸案になっていた著作権問題。テレビのバラエティ番組<中国好声音>(2015年終了、<中国新歌声>に衣替え)の海外との版権問題はその代表的な例でしょう。中国で著作権法が成立したのは1990年の7期全人代第15回会議で、翌1991年6月から施行されて25年も経っていますが、ネットの急速な普及に追いついていないのが当時の状況だったのです。
著作権問題でさえそうだったのですから、新興の電子商務が後手に回っているのは無理もありませんが、それも見方を変えれば、中国の常套手段(まずは走らせて規制は後から)の典型とも言えます。2016年の“双11”(11月11日)に関する調査で、12のショッピングプラットフォームの4分の一の商品に問題(商品ラベルの記載不足、栄養価の誇大記載、化粧品の禁止薬物試用など)が見つかりました。そこで国家工商総局は、消費者の保護を図る一環として、2017年3月、<ネット購入商品7日間以内無条件返品暫定規則>を実施しました。また、2019年には、ブームになった“網紅経済”(人気ユーチューバーやブロガーが誘導する消費)の信用問題もやり球に挙げました。それもこれも、2018年1年間で31兆6300万元にも達したECが経済に果たす役割の大きさ故でしょう。すでに都市部に限らず、貧困村にさえ97%普及したブロードバンドをベースにしたECが果たす役割にも期待は増すばかりですが、だからこそ、信用の担保が急務になっているのです。こうした取り組みによって、<中国電子商務知識産権発展研究報告(2019)>が示す如く、①効果的な知財権保護 ②規制法規の整備 ③信用評価システム・処罰システムなどによる各プラットフォームの管理 といった面ではこのところ目に見える効果が表れつつあります。
一方、ネットは金融システムでも様々な新しい形態を生み出しています。最近脚光を浴びているのが、ネットを使って情報を共有し、合意・約束に基づいて相互にリスクを負担し合う“ネット互助”で、2018年末の“ネット互助”主要11プラットフォームの会員数は1.5億人に達し、中には会員数8700万人を擁する世界最大のプラットフォームも誕生しています。しかしその一方で、多くの問題会員の存在など多大なリスクも抱えており、個人情報の保護も含め、ネットビジネスの進展にはまだまだ多くの解決すべき問題があるようです。