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第933回 人権擁護の取り組み
(2020年8月27日) 2019年9月、国務院は中華人民共和国成立70周年を記念して、建国以来の人権に関する取り組みを総括した<新中国人権事業発展70年>と題した文書を公表しました。全体は、第一章:人権の発展過程、第二章:人民を中心に据えた人権理念、第三章:人民生活の持続的向上、第四章:人民の各種権利の保障、第五章:特定クラスターの権利保護、第六章:法治による人権保障の強化、第七章と第八章:国際的な人権協議や支援活動への参加 という構成になっています。その中でまず強調されたのが人々の生活レベルの向上で、70年の間には様々な紆余曲折があったものの、GDPは1952年に一人当たり年間119元だったのが、2018年には64,644元と174倍になったこと、その他、一人当たりの可処分所得や消費支出、エンゲル係数など多方面にわたる統計数字が列挙されています。当然、貧困問題や飲み水、住居、交通、医療、社会保障などのデータも豊富に示され、その向上ぶりを示すと同時に、人民の、知る権利、参加する権利、表現の権利、監督する権利、教育を受ける権利、文化を享受する権利、民主的権利の保証も明記され、「満18才以上の公民は、民族・種族・性別・職業・出身家庭・学歴・財産・居住期限を問わず、選挙権・被選挙権を有している」とあります。
「中国独自の人権発展の道を歩もう」とは、同時期の2019年10月15日に人民日報に掲載された、華中科技大学の汪習根法学院長の評論記事ですが、氏はその中で、「中国独自の人権とは生存権と発展権を主とする基本的人権である」と定義しています。また、「それを保証するものが法治である」とも結論付けています。上記文書に記載された高邁な理念が、氏の言う「党の指導の下で」いかに公正に実行されるか、西側からの疑念を払うにはなお相当の努力と理論づけが必要になるでしょう。
中国最初の人権白書が発表された1991年から約30年が経ちました。2015年に発表された<2014年中国人権事業の進展>では、発展の権利、人身の権利、民主の権利、公正な裁判を受ける権利、少数民族の権利、婦女児童老人の権利、身障者の権利、環境の権利、対外交流と協力の権利 が明記されましたが、こういった概念にブレーキがかかるような事態は避けなければなりませんし、ここ数年、個人情報、プライバシーの保護に関する記事が急増していますが、この種の権利が政治的側面でも擁護されるべきことは言うまでもありません。