トップ > 現代中国放大鏡
Last Update:
第936回 新基建
(2020年9月17日)
5月頃から“新基建”という語をしばしば耳にするようになりました。同月の全人代でも李克強首相が政府活動報告の中で「新世代情報ネットを発展させ、5G応用の道を開拓し、データセンターを建設し……」と引用しています。この言葉が最初に登場したのは、2018年12月の中央経済工作会議ですが、今年春には習近平主席もこの語を引用しています。6月15日、人民日報は<新基礎建設により多くのボーナスを放出させよう>という記事を掲載しました。“新基建”にはAI、5Gデータセンター、IoT、ブロックチェーンなどの先端技術分野が含まれています。中国では近年これらの分野の発展が目覚ましく、AI企業の数は2019年末で4000社に達し、AI医療、AI教育、AI交通、AI環境保護など庶民生活の多方面にわたり実用化され、また、移動通信、クラウド計算、IoT、ビッグデータなどへも応用されています。5Gについて言えば、現時点で最終端末が3600万を突破、基地局は今年末までに60万カ所に上る勢いで、全国の地級市以上をすべて網羅し、応用項目は400以上、5G+工業インターネットは600項目以上に達しています。インターネットの普及が非常に進んでいる中国では、今年3月でネットユーザーが8.97億人に達し、ネット決済ユーザーも7.68億人とユーザーの85.0%に達しています。
その一方で、デジタル経済時代を乗り切るには、まだ土台が十分とは言えません。6月15日の記事でテンセントの郭凱天高級副総裁は、「我が国は5G、AI、ビッグデータなどでの基礎研究や基準の設定などでは、若干先頭を走っているが、核心技術や部品では先進レベルと差があり、工業関係の関連核心技術はまだ多くを手に入れていない」と述べています。クラウドコンピューティングやビッグデータの応用普及はデジタル化、AI化という趨勢をもたらしていますが、モバイル決済、顔認証、無人運転、IoTなどを支える自前のサーバーの開発が大きな課題になっています。他方、各地方政府も先を争って関連投資に力を入れています。広州市は“新基建”を今年の<政府活動報告>に組み込み、236プロジェクト(総額3700億元)を提示、5GとAIを中心に据えたAI・デジタル経済試験区を海珠琶洲地区に設置します。ブロックチェーン技術者、インターネット営業販売員という新職業も認定された中国。“新基建”は新たな雇用も生み出していくでしょう。