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第946回 思い切った土地改革―その2―
(2020年11月26日)
前回で述べた流れを受けて、2015年1月、政府は<農村財産権取引市場の健全な発展の誘導に関する意見>を出して、その環境整備に取り組み始めました。それによると、取引市場は各種の農村財産権(当面は、土地の経営権、林地の使用権、“四荒”使用権、農村集団経営資産、農業生産設備、小型水利施設使用権、農業関係知財権、農村建設プロジェクトの入札、産業プロジェクトに関する企業誘致や譲渡など)の法に基づく取引に場を提供するもので、その主たる目的は、農村の休眠資産を覚醒させて、農村の経済的活力を最大限に発揮させようというものです。当時既に全国800余りの県、13000余りの郷鎮に土地取引センターが、また、林業管理部門に委託した林地使用権取引センターも1200か所設立され、成都・重慶・武漢などには、総合取引所も相次いで開設されました。同年2月の全人代常務委員会では国務院に、全国33の県級行政区での“农村三块地改革”試行が許可され、いよいよ本格的な実施へ具体的取り組みが開始されました。同時に、前述の如く耕地の「非農地化」を防ぐ措置も怠りなく進められました。同年4月に、政府は<工商資本の農地賃貸に対する監督管理とリスク防止の強化に関する意見>を出し、農村の発展のために工商資本が取引市場を通して農村へ進出することは大いに歓迎しつつ、その一方で、長期に渡り広大な農地を借り上げることに上限をかぶせると共に、農民の権益侵害というリスクを回避するために補償金制度の確立を求めました。
こうしたポイントを抑えつつも、同年8月に国務院は<農村請負地の経営権と農民住居財産権による担保融資の実験に関する指導意見>を発して、担保融資について各地の基準を統一し、法律による制度保証を与え、一定規模以上の農業経営主体に対する融資を奨励しましたが、このような行為が農民側の自主的な申し出を条件とすることにはくぎを刺しています。
以上のような重大な方針が2014~15年に決定され、それに合わせて、この5年(~2020年)を目途に、権利確認の登記証発行が進められたのです。しかし、その過程は順風満帆というわけにはいきませんでした。例えば、担保物件に対する評価制度が不完全なため、評価の決定が困難なこと、融資などにトラブルが生じた場合、担保物件をどう処理するかが難しいことなど、いくつかの隘路も顕在化しました。