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Last Update:2017/3/8
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第327回 労働集約型産業に増すコスト圧力

Increasing Cost Pressure on Labor-intensive Industry

(2017年3月8日)

  国務院国有資産管理委員会によると、2017年の国有持ち株工業企業の利潤総額は1兆2,000億元となり、2016年に比べて1,100億元増、10%の成長が見込まれるという。一見すると2017年のGDP成長率目標6.5%(この目標値は、3月5日に始まった第12期全国人民代表大会第5回会議において、李克強首相が示した。)を上回り、満足し得る成長を示すようである。
  しかし、2017年のGDP成長率目標は、2016年の目標であった6.5〜7%から下げられたものであり、GDPの成長率維持には各種の障害があることを中国政府は認識している。国有持ち株工業企業も利潤総額を10%上げるには難しい問題がある。大きな問題として、(1)コスト上昇、(2)製品在庫増、(3)資産負債率の上昇が挙げられる。
  国有持ち株工業企業にこのような圧力があるところ、労働集約型企業、とりわけアパレル企業はさらに苦しい。
  浙江省諸曁市のあるアパレル委託生産企業Z社は、利潤がなく、廃業に追い込まれた(経済日報 2017年3月4日)。Z社は、英国市場において150ユーロ(約1,120元)で販売される毛織物洋服を生産しているが、工場出荷額は470元でこの10年間この価格は据え置かれたままである。
  470元のコスト内訳は次のとおりである。毛織物原料コスト300元(コストに占める割合は64%。以下、括弧内はコストに占める割合)、ボタンなどの補助材料、包装、物流など60元(13%。従来は30元であったのが2倍になった。)、水道光熱費10元(2%、従来は2〜3元)、増値税及び付加価値税25.85元(5.5%)、機械設備減価償却及びメンテナンス費用5元(1%)、人件費50〜60元(13%。従来は20元)、土地関係費10元(2%。従来は3元)、このほかに借入金利息支払いなどを加えると、利潤はゼロである。
  このうちコストに占める割合が大きく、上昇率も大きいのが、原料費と人件費である。人件費は、従来は1人平均1,000元/月であったのが、現在は3,000〜4,000元になっている。こうした圧力を受けて、浙江省諸曁市には最盛期に650余社のアパレル企業があったのが、現在は2〜300社に減っている。
  広東省は2017年、最低賃金の引き上げを2015年から3年連続で見送ることを正式に決めた。広東省は、最低賃金ルールも従来の「2年に1度」のベースアップから「原則3年に1度」に改め、賃金上昇のペースを抑制するという。最低賃金の抑制は全国にも波及し始めているそうである(日本経済新聞 2017年3月4日)。ただ、労働者の権利保護を考えると、簡単には行きそうにない。また、労働者の人件費を抑制するだけでは国際競争を勝ち抜けそうにない。そこで、産業ロボットを導入し、コスト低減を図っている企業が復活している。企業は、生産体制の改善を図りことが求められる。

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