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Last Update:2016/12/28
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第322回 都市化と格差社会の問題

Urbanization and disparity issues

(2016年12月28日)

  2015年に中国の都市化率は、56.1%に達した。中国政府は、先進資本主義国並みに都市化を推進したいとしているので、この数字は都市化の途上であるということになる。
  しかし、都市に人口が集積していることをもって都市化が進んでいるとは必ずしも評価されない。実質的意味においては、(1)都市住民の1人あたりGDPを高め、(2)サービス産業、とりわけハイエンドのサービス産業の発展を促し、 (3)都市人口の構造を合理的にする必要がある。
  (1)に関しては、次の問題が指摘できる。中国の1,000万人都市に北京、上海、天津、重慶、広州、深圳、武漢がある。この特大都市の1つである北京の一人あたりGDPは1万5,052ドル(2014年。『中国人口与労働問題報告No.17』より。以下のデータはいずれも同報告より抜粋。www.pishu.com.cn)であるが、これは東京の39%でしかない。
  (2)に関しては、次の問題が指摘できる。ニューヨークやロンドンのサービス産業のウェイトは、全産業の90%程度を占めるが、中国は北京でも52%に過ぎない。さらにその構成も不合理である。先進資本主義国は、第3次産業の構成は情報、コンサルティング、科学技術、金融などの分野が主要な位置を占めている。しかし、中国は、飲食、交通運輸などの伝統的サービス業の比重が大きく、約37%を占めている。サービス産業について言えば、技術革新力は弱く、品質、管理、販売促進技術水準も先進資本主義国と比べて非常に劣っている。北京は52%のサービス産業があるところ、この半分が伝統的サービス産業であると言われている。
  (3)に関しては、次の問題が指摘できる。都市人口のうち農村からの外来人口が多いことである。北京の場合には、2005年に23.2%、2015年には37.9%に増えている。  以上の点に留意すると、意図している都市化が十分に進展しているとは評価できない。その他、人口が増えたことで、交通渋滞、職住分離、公共サービスの供給不足という問題があり、さらに大きな問題として、都市内で格差社会が生まれているということも指摘できそうである。この格差には、経済格差、教育格差、社会保障格差、戸籍制度の格差(都市戸籍と農村戸籍の存在。戸籍の自由な移動が認められない。)がある。
  零点市場調査公司の2014年の調査によると、低所得層と中低所得層の間の世代間流動性は極めて少ないという。彼らは、自らの将来についても悲観的である。自分を中低所得層だとみなしている人の68%は彼らの両親も中低所得層に属しており、87%の低所得層は彼らの両親も同じ階級に属しているという。中国の大多数の低所得層は社会階級のピラミッドの底辺にとどまり、ここから脱出することができない(The New York Times, November 29, 2016)。都市化を推進し、持続的経済成長を図るには、戸籍制度改革を始め、経済格差、教育格差、社会保障格差を改める改革が行われなければならない。

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