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Last Update:2017/3/8
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第328回 民法総則の制定

General Provisions of the Civil Code Enacted

(2017年3月22日)

  2017年3月8日の第12期全国人民代表大会(全人代)第5回会議において「中華人民共和国民法総則」(全11章、206条)が制定された。同法は、2017年10月1日から施行される。
  中国に民法典はこれまで存在しなかった。1979年の改革開放直後からさまざまな立法計画が立てられ、この中に民法典の制定もあった。しかし、改革途上にある経済体制の中で、多様な権利主体があり、この主体間の権利関係を直ちに規律することはおよそ不可能である。そこで「民法通則」として民法の基本法が制定された。
  民法通則(全9章156条)は、1986年4月12日に採択され、1987年1月1日から施行されている。民法通則は、内容に関しては、一般的な民法総則の内容と重複する。それでも正式な民法典とは見なされず、物権法、契約法、担保法、婚姻法など民事法の基本法というような位置付けと認識されている。
  そこで、民法典の制定は常に立法政策における重要な課題となっていた。1998 年に全人代常務委員会は、再び民法典を制定することを立法計画に入れた。以後、およそ20年かけてここに「民法総則」が制定・公布されることになった。
  新華社は、3月12日に民法総則制定に際して、草案に126箇所の修正が加えられたと伝えている。この修正事項の1つとして、次のことが紹介されている。ある代表が「ある人が事実を歪曲し、誹謗中傷するなどの行為によって悪意をもって英霊の名誉、栄誉を辱め、社会公共の利益に損害を与え、社会に悪い影響を及ぼしていることに対して規律しなければならない。」という意見を述べた。これを受けて法律委員会は、「英雄烈士の姓名、肖像、名誉、栄誉を侵害し、社会公共の利益に損害を与えたものは、必ず民事責任を負わなければならない。」(第185条)という条文を加筆した。
  このような民法総則制定における修正事項が報道されたためか、ニーヨークタイムズは、3月16日にJAVIER C.HERNANDEZ and OWEN GUOの「Xi Jinping Pushes Legal Overhaul That Would Bolster State Power」という記事を配信している。この記事は、習近平は、民法典を反腐敗国家の権力強化の道具としたいようだと指摘している。
  第185条については、全人代委員の中にも反対意見がある。「共産党委員以外の市民権も確保されるのか。個人の尊厳と自由・平等という観点からは、民法の基本精神に反しているのではないか。」との懸念も表明されている。
  日本民法は、第2条で「この法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等を旨として、解釈しなければならない。」と民法解釈の基準を規定している。中国民法総則の解釈基準は示されていないが、「中国の特色ある社会主義発展の要請に適応し、社会主義の核心的価値観を発揚する」(第1条)ことが解釈の基準になるのだろうか。

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