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Last Update:2018/11/14
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コラム『チャイナウォール』-中国人の法意識-

第367回 開放型グローバル経済に司法サービス

(2018年11月14日)

  最高人民法院党組織は、2018年11月9日に会議を招集し、習近平党総書記の第1回国際輸入博覧会開幕式における基調講演および上海視察時の重要講和精神の学習会を開いた。
  この会議において、周強・最高人民法院院長は、開放型グローバル経済のために司法サービスを提供すると述べている。このために、(1)渉外法律体系を整備し、透明性を高め、(2)外資企業の適法な権利・利益の平等を保護し、(3)外国企業の適法な権利、特に知的財産権侵害を厳しく取り締まり、(4)懲罰的賠償制度を適用し、違法行為のコストを著しく高くし、(5)取引環境の国際化、法治化、利便性を追求する、としている。さらに、渉外商事海事裁判業務を強化し、最高人民法院の国際商事法廷としての機能を十分に発揮しようとしている。
  主に対象は、長江三角州地域の一体化が、国家戦略の重大任務とされているところ、最高人民法院は、自由貿易試験区、自由貿易港の活用においてサービスを強化しようとする。また、“一帯一路”建設に対するサービス強化も視野に入れている。
  国内に目を転じると、民事事件および民衆の関心事として、就業、教育、医療、養老などについての矛盾が大きくなっているようで、これに対処して、民衆の満足感、幸福感、安全感を高めるようにしたいと言う。
  以上を実現しようとするならば、司法サービスだけでなく、国内・対外における法治(法の支配)ということも重要になるだろう。
  シュプリックマンは、人は、生来の権利として、人格、対外的自由と平等という権利を求めるとして、次のように述べている。「誰かと交流する権利、誰かに自分の考えを伝える権利(思想を持つ自由だけでなく、思想を伝える自由、すなわち、意見表明の自由)、そして、権利を保障するために市民的状態に入ることを誰かに強制する権利(見かけのうえでは、市民の基本的義務と五感関係に立つある種の国家基本権、一種の勧誘強制)、これらの権利は全て、生来の権利から派生したものである。」(トーマス・ヘエーレン編著、山内惟介編訳『ミュンスター法学者列伝』中央大学出版部、2018年、23-24頁)。
  さらに、シュプリックマンは、「国家権力は、……権力に固有の私利私欲の手段または道具を用いて、人間の尊厳という制度をどこまで尊重するかの決定権を乱用することができる。」と述べている(同上、24頁)。
  中国が、国境という壁を克服しようとするならば、ベルンハルト・グロスフェルトの言葉を借りれば(同上、527頁)、「外国の制度、構造および秩序を理解しようとする努力」が必要であり、「市場のグローバル化を法的に捉える際の一つの手がかりとなる国際司法への関心」を高め、国際的融合を意識する必要がある。

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