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Last Update:2018/10/24
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コラム『チャイナウォール』-中国人の法意識-

第366回 企業のグリーン活動原則

(2018年10月24日)

  2017年3月15日に改正され、同年10月1日から施行されている民法総則第9条は、民事主体が民事活動をする場合には、資源の節約及び生態環境の保護に有利な活動でなければならないと規定している。旧民法総則にはなかった条項で、改正により新たに加筆されたものである。
  これは、民法の基本原則の一つであると位置付けられており、環境問題に対する中国の意識の高まりを示す証左であると考える。資源の節約及び生態環境の保護は、中国の持続的経済成長及び世代間の公平にとって不可欠な問題であるとの認識が強まっている。
  中国は、この第9条を一般に「グリーン原則」(緑の原則)と言っている。民法でこの「グリーン原則」を定めたことは、(1)企業による生態環境に対する不法行為を取り締まる効果をもたらし、(2)公益訴訟・損害賠償、環境破壊の修復責任の根拠となるだけでなく、(3)「グリーン開発」という新時代、新ビジネスのチャンスにもなるものと考える。
  江蘇省と浙江省の境界に位置する太湖は、中国の著名な観光地である。ところが、この太湖が、藻類の増殖、悪臭、水質の悪化などの問題を抱え、無錫など周辺の都市に深刻な打撃を与えている。
  この問題を解決しようと「無錫康明斯渦輪増圧技術有限公司」(無錫カミンズ・ターボ・テクノロジー有限公司。米国のディーゼルエンジン・メーカー)は、同社の技術を使って、多くの利害関係社を巻き込んだ太湖の水質改善プロジェクトを始めた(https://www.csr-china.net/a/zixun/shijian/zrjzlal/2018/0330/4224.html)。
  このプロジェクトは、同社が単独で実施するのではなく、環境慈善団体「グリーン太湖」とともに立ち上げられ、さらに無錫新区環境保護局、無錫市水利局、無錫新区の新鳳・荘・梁西呂の各社区(コミュニティー)、無錫市外商投資企業協会などの協力も得て進められている。
  こうした取組みにより、地域住民の環境意識も高まり、市民・企業従業員延べ673人が、1,767時間以上、ボランティア活動に参加したという。このプロジェクトにより、太湖の年間9000トンの水質が大幅に改善され、受益者の数は無錫市民50万人に達した。
  グリーン活動は、企業のブランドイメージも強化する。同社は、無錫新区生態文明の2015年の年間公共サービス賞、無錫市の優秀外商投資企業CSR賞(2015年)、無錫新区の「和諧社会賞」(2015年)を受賞している。
  民法総則の改正は、企業活動の考案な分野にも影響を与える。民法典の起草も進んでおり、8月27日に草案が全国人民代表大会常務委員会に提出されている。今後の動向が注目される。

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