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Last Update:2018/8/8
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コラム『チャイナウォール』-中国人の法意識-

第361回 “一帯一路”の法的枠組みとWTO

(2018年8月8日)

  最近、中国の“一帯一路”構想関連のプロジェクトが、その実施過程において、投資受入国の人々の中で、又は中国と投資受入国との間でさまざまなコンフリクトを生じていることが目立ってきている。
  中国共産党及び政府は、“一帯一路”構想に邁進しており、中国企業も中国共産党と政府の意向を体現すべく“一帯一路”構想関係プロジェクトを実行している。しかし、この実行過程において中国は、どのような“一帯一路”構想に関わる規範を構築しようとしているのかは見えてこない。現時点では、単に中国の権益が強化されれば良いという姿にしか見えない。そうであるからさまざまなコンフリクトが生じているのであろう。
  中国は、“一帯一路”構想実施における規範を示す必要がある。では、どのような規範を示す必要があるのか。WTO協定によるものとすれば良いのだが、中国は固有の枠組みを構築したいとの思いがある。筆者は、この場合においてもWTO協定に倣った経済活動を規律するルールを構築する必要があると考える。
  WTO協定は、国際経済・通商活動を円滑にするための規範、法的枠組みである。WTO協定は、1995年1月に発効した「WTOを設立するためのマラケシュ協定」(いわゆるWTO設立協定)とその付属文書のことをいう。WTO協定の構造は、(1)付属書1—A「物品の貿易に関する多角的協定」、B「サービス貿易に関する一般協定」(GATS)、C「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定」(TRIPS協定)、(2)付属文書2「紛争解決に係る規則及び手続に関する了解」(DSU)、(3)付属文書3「貿易政策検討制度」(TPRM)、(4)付属文書4「複数国間貿易協定」からなる。
  今、米国など自由貿易を阻害する行為が見られる。このとき、中国は、秩序ある経済要素の自由な流動、資源の効率的配置及び市場の融合を促進し、“一帯一路”沿線各国と経済政策の協調を実現し、さらに広範囲、高レベルな地域協力を展開し、共に開放、包容、均衡、互利の地域協力の枠組みを形成しようと述べている。
  関係国にはそれぞれが固有の政策的価値観や異なる文化を有しており、経済発展レベルも異なるところ、あらゆる面において融合することは難しい。こうしたことを意識しつつ形成されたのがWTO協定である。
  2018年4月に開催された「一帯一路貿易投資国際フォーラム」において採択された声明には、安定・公正・透明・公平な規則及び制度、積極的に紛争を予防・解決する制度、その他の法制度を構築することについて協力するという趣旨が盛り込まれている。そうであるならば、中国もWTO協定に反する枠組みを形成しようとしてはならないし、むしろWTO協定に習った規範を構築することが求められる。

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