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Last Update:2018/5/23
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コラム『チャイナウォール』-中国人の法意識-

第356回 個人情報保護法の制定に向けて

(2018年5月23日)

  中国は、今、個人情報保護法の制定に向けて法案を起草中である。筆者は、5月3日および4日に蘭州大学法学院の招きで中国・蘭州市を訪問し、同大学において「日本の個人情報保護法の現状と課題」として講演を行った。(http://news.lzu.edu.cn/c/201805/48695.html)。筆者のほかに田漢哲氏(大成法律事務所パートナー・弁護士)が韓国の個人情報保護法について紹介をした中国は、各国の個人情報保護法の現状について比較研究し、中国固有の法整備を進めようとしている。
  中国において個人情報とは、個人のプライバシーを識別できる電子情報のことをいう。インターネット・サービス・プロバイダーは、その業務活動においてさまざまな個人情報を取得するが、これを随意に第三者に提供し、他の人の用に供する場合には犯罪と認定される。
  「刑法改正法九」(第9回刑法改正、2015年8月)第17 条は、個人情報侵害罪について、個人情報を取得する事業者が、事業において取得した情報を他人に売買または不法に提供した場合には重く処罰するという趣旨の改正を行った。これは、従来の個人情報取扱者が「国家機関または金融、電信、交通、教育、医療その他の分野に関する組織体の職員」であったのを広く個人情報取扱事業者全般に拡大したものである。
  中国は、2017年6月に「インターネット安全法」を施行しているが、同法においても重要情報インフラ運営者の範囲が、ネット関連業者だけでなく、報道機関や医療、教育、保険、交通、エネルギーなど多くの業種、さらにその他の重要な業者と網羅的に捉えられているのと同様である。「刑法改正法九」第28 条には、インターネット安全管理義務履行拒否罪という罪が新設されている。このインターネット安全法は、この刑法改正法九に対応するものである。
  個人は、如何に自らの情報を管理し、コントロールする権利を守ることができるか。また、政府や事業者が個人情報を保護しつつ、如何に個人情報を経済活動に活用するか。今後、十分に検討されなければならない課題である。
  なお、アジア太平洋経済協力会議(APEC)には「越境プライバシールール(CBPR)」という枠組みがあり、日本、米国、カナダ、韓国などが参加し、参加国間で企業が情報をやり取りしようという場合に、認証団体の審査に通ることを求める。いずれの枠組みも、データを行き来させたければ、国内の個人情報保護制度が整備されていることを求める。中国は外国企業が中国国内での事業活動で得たデータの国外持ち出しを禁じる一方、日本と中国の間には双方の制度への信頼に基づいた枠組みはない。
  今後、中国もAPEC のCBPR 枠組みに加入し、日中間においても当該問題に関する協力枠組みを形成する必要もあるかも知れない。

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