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Last Update:2018/7/27
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コラム『チャイナウォール』-中国人の法意識-

第360回 「摸着石头过河」の由来

(2018年7月25日)

  中国共産党中央党校が編纂し、1999年9月から隔日で発行されている新聞「学習時報」の2018年4月9日付の紙面で「摸着石头过河の由来」(王達陽氏の署名記事)が紹介されている。
  「摸着石头过河」(摸着石頭過河)は、もともとは“歇后語”(民間で伝承されている謎かけ言葉)であるが、この言葉を党・政府が引用し始めたのは、1965年6月6日の人民日報に遡るという。農業部が「1959年の農業生産に関する幾つかの意見」を述べる中で、耕地を効率良く使用し、収穫を高めるに際しては、川底の石を足で探りつつ、一歩一歩対岸に渡るようにすることで任務を完成させることができるという指摘をしたのが初出である。この言葉の概念には、単に用心深くというだけでなく、大胆かつ細心に探索し、安定的に前進するという意味が含まれている。
  改革開放以降は、党中央、国務院の文献にも引用されることが多くなる。例えば、1981年10月の国務院の「工業生産経済責任制を実行する若干の問題に関する意見」などで見られる。
  「摸着石头过河」は、多くの人が、鄧小平がしばしば引用していると言っているようだが、違うようである。
  王達陽氏によると陳雲(毛沢東、鄧小平の年代の人で国務院副総理などを歴任)が1950年代によく使っていたと言う。鄧小平自らが、この言葉を使ったことはないようである。しかし、鄧小平の考え方は「摸着石头过河」であって、このことは例えば、1978年12月の「解放思想、実事求是、団結一致向前看」(思想を解放し、事実に基づいて真理を追求、問題を処理し、一致団結して前に向かう)の中にも見られる。ここで鄧小平は、「改革開放は、中国にとって全く新しい事業であり、実験である。改革開放を大胆に行い、あえて実験をしなければならず、弱々しくあってはならない。正しいと思えば、大胆に試みよ」という趣旨のことを言っている。
  習近平総書記は、2012年12月に第18期中央政治局全体学習会において「摸着石头过河は、中国の特色に富んだもので、中国の国情にかなった改革方式である。……石を投げて道を問う方法で、経験を積み、共通認識を形成し、正しいと判断でき、推進が穏当であると判断したところで、さらに推し進め、小さい勝利から始めて大きな勝利を勝ち取る。」と述べた。
  さて、中国が今、最も力を注いでいる事業に “一帯一路”構想がある。この事業推進において、投資受入国との間で少なからぬコンフリクトが生じている。「摸着石头过河」と言いながら、些か性急なのではないだろうかと気にかかる。

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