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Last Update:2018/7/11
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コラム『チャイナウォール』-中国人の法意識-

第359回 デジタル革命で世界に先行する中国

(2018年7月11日)

  世界貿易機関(WTO)は、7月4日に2018年度の上半期報告を行い、この中でG20の貿易障壁が高まり、世界経済への悪影響が懸念され、かつ現実化してきたと述べている。G20が2017年10月から2018年5月中旬までに39項目の貿易制限措置を講じており、この件数は前半期の2倍になったという。この貿易制限により741億ドル、前年比2.5倍の貿易が影響を受けているとしている。
  こうした中、米国は、「中国製造2025」を阻止しようと7月6日に対中制裁関税を発動したが、実行効果はあるだろうか。中国は、なお「中国製造2025」の実現に自信を持っている。デジタル革命でも世界をリードしていると言える。これを推進する力は、中国の国策としての大量の補助金投入とインターネットユーザーの存在である。
  例えば、貴州省貴安新区は、2014年に中国国務院によって中国でビッグデータ産業を振興する試験区に選ばれ、ビッグデータ産業などを誘致している。貴安新区のビッグデータの総事業規模は、2016年に250億元を超えた。フォックスコン、クアルコム、ファーウェイなどの巨大企業が投資をしている。
  米アップルのiCloudプロジェクトチームは、貴安新区に雲上貴州大数据産業発展公司と共同で同社としては中国初のデータセンターを建設する。投資金額は10億ドルに達し、約67ヘクタールの面積でセンターを建設する。2018年中に建設を開始し、2020年初めの運用開始を見込む(新華社2018年2月12日)。これに伴い、アップルは、中国人ユーザーのiCloudアカウント運用を中国データセンターに移行する。
  中国のデータセンターサービス市場は、過去10年間で大幅に成長し、サービス提供価値は2010年から2017年にかけて年平均成長率(CAGR)が約38%もあった。2017年には市場は159億ドルに達し、2018年も同程度の成長が見込まれる。
  インターネットユーザーが多いことが、このデータセンターをさらに機能させることになる。中国インターネットネットワーク情報センター(CNNIC)」の「中国インターネット開発統計報告書」によると、2017年6月現在、中国のインターネットユーザーは7億5,000万人と世界のインターネットユーザーの5分の1を占める。中国のインターネット普及率は54.3%で、世界平均を4.6ポイント上回っている。中国アリババ・グループは、2017年11月11日「独身の日」のセールの売上額が1683億元(254億ドル)となり、前年比39%増になったと発表した。
  中国は、第13次5カ年計画の経済発展の最優先項目の1つとして、大規模データ、クラウドコンピューティング、IoTアプリケーションなどの開発と普及を掲げている。データセンターに関することではないが、「中国製造2025」国策により、広東省東莞市は「ロボット計画」を発動している。人件費高騰の中、工場の機械化を進めるというものだが、この計画に東莞政府は毎年3,000万ドルを支出している。さらに自動化を進めるために投資金額を増やす計画がある。政府が、企業に対してプロジェクトの10〜20%の補助金の支給し、さらに減税などの優遇政策も併せて供与する。世界の製造強国になるために、開発独裁を行う。この市場に外国企業が参入できるか。米中貿易戦争の影響もあり、外資にはなお遠い市場である。

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