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Last Update:2019/1/23
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コラム『チャイナウォール』-中国人の法意識-

第372回 格差社会が生む犯罪〜オンラインギャンブル

(2019年1月23日)

  山西大同警察は、最近、オンラインギャンブル詐欺事件を摘発した(経済参考報 2019年1月15日)。
  詐欺グループは、海外の正式なギャンブルサイトを装い、中国政府が公認している福祉宝くじの北京レーシングカーをリアルタイムで流すように装い、参加者に賭けをさせていたものである。全国16省65市で詐欺グループが活動し、3ヵ月で3.8億元を稼いでいた。警察は、広東省、福建省、浙江省および内モンゴル自治区で7人の容疑者を逮捕し、300万元以上の資金を差し押さえた。
  この海外ギャンブルサイトは、海外で設立されたものだが、実際には国内の中国人が偽のIDで海外に拠点を設け、ウェブサイトを設立したものである。警察は、フリピン・マニラやミャンマーなどに協力者がいることも把握しているが、海外の容疑者の多くは中国人であった。
  ギャンブルに興じるのは、もちろん中国国内の中国人である。被害者の一人は、海外ギャンブルサイトのアカウントを取得したのち、すぐに1万元の利益を得たが、2017年の冬から2018年の夏にかけて20万元を失った。ある被害者は、数十万元を失ったのち、自らがエージェント・アカウントを取得し、オフラインのギャンブラーを誘い、ギャンブル料の5〜10%をコミッションとして稼ぐようになった。ギャンブラーは、当初は甘い罠に引き付けられるが、ギャンブル自体が操作されているのですぐに大きな損失を出すようになる。それでも抜け出せなくなるのがギャンブルの怖いところである。
  今回のオンラインギャンブル詐欺事件の摘発は、氷山の一角である。海外のギャンブルサイトは、ドメイン名も頻繁に変更し、集金用の銀行口座も頻繁に変更するし、資金はすぐに引き出され、別口座に移されるので把握が難しい。中国国内の犯罪者も特定が困難なようである。
  北京レーシングカーという福利宝くじは、中国福利宝くじ発行管理センター(中国福利彩票発行管理中心)が組織して販売しているものであり、北京市福利宝くじ販売所内でのみ販売され、インターネットによる販売は禁止されている。2015年および2018年に財政部など政府機関が共同でインターネットによる福利宝くじ販売を禁止する公告を発布している。
  それにもかかわらず闇のオンラインギャンブルが行われているのが実態である。多くのギャンブラーが生まれる原因の一つに、経済格差の拡大がある。経済成長に乗り遅れたと感じる者やもっと背伸びしたいという者が、一攫千金を狙ってギャンブルに手を出す。中国政府がオンラインギャンブルを撲滅しようとするならば、経済格差の縮小政策を講じる必要がある。

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