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Last Update:2019/2/13
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コラム『チャイナウォール』-中国人の法意識-

第373回 人格権と民法典の編纂

(2019年2月13日)

  今、中国で民法典の編纂が進められている。2018年8月の第13期全国人民代表大会常務委員会第5回会議において民法典編纂に関する審議が行われた。草案では、民法総則以外に6つの編を構成しようとしている。この6編は、それぞれ(1)物権、(2)契約、(3)人格権、(4)婚姻家庭、(5)相続、(6)権利侵害で、全1034条から成る。人格権が、1つの独立した編として民法典に組み込まれようとしていることは注目に値する。
  人格権は、生命、身体、健康、名誉、氏名、肖像、プライバシー、個人情報など、人と分離することのできない利益(人格的利益)を対象とする権利であり、人格編は6章45条から成る。
  この人格権は、物質的および個人的権利、ならびに名目上および精神上の人格権を含むものである。これは、生前に個人によって享受される権利・利益について規定するだけでなく、死後の個人的利益の保護についても規定している。
  さらに特徴的であるのは、物理的空間の人格権を保護するだけでなく、ネットワーク環境における人格権の保護も規定していることである。また、セクシャルハラスメントの禁止、ストーカー行為の禁止、正確かつ完全な信用記録の維持、個人の遺伝情報といったプライバシーの保護などについての規定も見られる。
  草案第774条第1項は、民事主体の人格権は法律の保護を享受すると規定しながら、第2項で「この編が規定する人格権を除き、自然人は人身の自由、人格の尊厳に基づき生じるその他の人格権益を享受する。」と規定している。
  ただ、現時点において「その他の人格権益」の概念は明確に規定されていない。民法典で明確に規定されていない人格権益というものもあると考えられるが、これをどのように保護するのか。
  人格権に関する編を設けて規定する保護法益はどこにあるのかが問題となる。
  例えば、人工知能の発達に伴い、個人的情報量はますます広がりを見せ、この個人情報にアクセスする手段も多様化しているところ、個人の利益のために同情報を保護することはますます重要になってきている。情報の利用利便性による産業発展という効果を維持しつつ、人格権を保護するということとの利益衡量が十分に検討されなければならない。この場合には、人格権を保護するということの最低要件について規定することが求められる。
  習近平国家主席は、民衆の満足感、幸福感、安全感を高めるようにしたいと言う。人権派弁護士を不当に逮捕するなどの状況が後を絶たない中、人格権を保護しようという本気度はどうなのであろうか。

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