三潴先生のコラム

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■No.716

Last Update:2016/04/25

 

トップ現代中国放大鏡

コラム 「現代中国放大鏡」

 

 第717 2016年春の全人代 

(2016425)

   2016年春の全人代、李克強首相は政府活動報告で2015年を回顧し、@マクロコントロールの刷新 A市場活力の喚起 B産業のイノベーションとグレードアップ C地域協力による広範囲な新型都市化 D社会福祉の改革発展 E社会の安定の促進などを挙げましたが、見方を変えれば、これらは直面する主要課題でもあります。GDPの数字については、平均値だけで見るのは甚だ危険です。勿論、2015年に31の省自治区のうち208%以上と言う数字は疑わしいのですが、遼寧省3%、山西省3.1%と地域格差も激しく、これは人口構成や賃金などについても言えます。全国主体機能計画に基づく地域発展プランは各地の特徴に合わせて作成されており、その内容は様々だ、ということは肝に銘じるべきでしょう。
   
マクロコントロール関連では、人民元の国際化、為替政策、金利の自由化、証券市場の整備、地方債務問題、いずれも改革途上です。市場活力の喚起では、民間活力導入がネットビジネスでは先行していますが、国有企業改革や銀行業、一部特定産業分野の開放は、30%出資を上限にしたり、発言権が付与されなかったり、と改革は緒に就いたばかり。教育界での遅れも際立っています。政府が本格的に力を入れ始めた産業のイノベーションとグレードアップは、漸く基礎研究分野でも成果が挙がっていますが、それを産業化する力が弱いのが難点です。地道な研究より安易なM&Aによる技術買収に走り勝ちで、政府系部門の最先端分野への惜しみない資金投入と一般企業の開発資金の少なさという対比も顕著です。発明者の権利強化もどこまで実行されるのか未知数です。都市化は小都市の建設と都市群の形成という二つの側面がありますが、前者については雇用の確保が最大の課題で、貴州省のビッグデータのように、新しい基幹産業の育成が不可欠。社会福祉や社会保障の面では、貧困撲滅と共に高齢化対策、医療・教育のレベルアップと地域差の改善などが精力的に進められていますが、核家族化がもたらす、大家族制を基盤とした社会の見えざる下支えの崩壊へどう対処するか、人口問題も含め、予断を許しません。社会の安定には法治の強化が欠かせませんが、強力な情報統制が資本市場の整備や市民活動の育成を阻害する側面をどう打破するかは、体制の根本に関わる問題であり、一朝一夕では解決できません。何より、待遇の悪い地方裁判所の裁判員不足や優秀な裁判官の流出による司法機能の低下は体制の危機に繋がります。


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