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LastupDate:2003/10/08
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コラム、『チャイナウォール』-中国人の法意識-

 はじめに −中国人の法意識−

(2003年10月8日執筆)


はじめに

  中国人の法意識について、考察を試みたい。
   なぜ、中国人の法意識について考察したいかというと、日中ビジネスの実務上、コミュニケーションをうまく図り、国際取引契約や合弁企業などの運営管理を円滑にするには、中国人の法意識を理解することが重要であると考えるからである。
   この点を強調するのは、かかる研究が極めて少なく、また、一般にビジネス書などで紹介されている中国人の法意識のとらえ方に違和感があり、時には中国ビジネスの未経験者、または初心者に対して少なからぬ誤解を与えるものになっているのではないかと感じることがあるからである。
   一般に中国人の法意識を評して、「中国人には法観念がない」「契約を遵守しない」「紛争処理は友好的協議によることを強調するのは、儒教思想による」ということなどが言われ、大変に単調な評価ばかりである。
   しかし、中国人の法意識をこのように単純に言い切ることができるであろうか。 法意識の形成基準として考えられるものにも、古代中国からの中国法の長い伝統があるが、マルクス・レーニン主義・毛沢東思想期に形成された法意識、さらに改革開放後に移植された先進資本主義国の法体系から形成された意識など複雑なものがあろう。中国人が実際の生活上で法的判断をする場面が生じたときには、上記の法意識が働くほかに、さらに現行法制度に対する知識の有無、この制度から派生して検討される価値判断が法意識の基準となってくる。意識を持つ主体にも、立法者、法律家、市民などがある。共産党員であるか否か、老若男女などの差もあるかもしれない。
   このようにさまざまな法意識の発現要因があるところ、一律の評価を与えることは危険であろう。危険であるというのは、ビジネスの実務上は、なおさらにその時々に適切な判断をしなければ、契約交渉や紛争処理方法を誤るということになるからである。
   以上のような問題意識から、中国人の法意識について、先入観を持つことなく考察してみたいと考える。従って、論文であれば、あらかじめ結論があり、これを論証することになるのであろうが、現時点において結論は不明である。中国人の法意識に対する一般的解釈に疑問を呈したものの、これは違和感からであり、筆者の違和感が正しいか否かも判然としない。   
 しかも、筆者は浅学非才であり、この問題についての深い分析・考察も行なってきたわけではないから、体系的な叙述も到底できない。
   では、どのようにこの問題に取り組むか。現代の裁判例などにより実際の分析をするのが適当であると考える。この中で、中国人の権利意識、契約意識、所有権意識、法制度に対する意識がどうであるのか理解できれば、これら意識を形成する法意識がどうであるかを理解することができるのではないかと考える。
   考察の対象とする裁判例に適切なものがあるのか否か。この点も定かではない。取りあえず、最高人民法院公報などで公表されている事例によらざるを得ない。もとより、これら事例は、中国人の法意識を明らかにするために構成されたものではないので、考察対象とするときの難しさは当初から想定されることになろう。それでもなお、他によるべきものがないので、裁判例を分析・検討し、中国人の法意識という主題に迫ってみたい。
   どうなるか分からないコラムが始まるわけである。それにもかかわらず、このような機会を与えて下さった海外放送センターに深謝するしだいである。

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