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Last Update:2017/5/10
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第331回 中国の目指すグローバル化とは何か

What kind of globalization will China pursue?

(2017年5月10日)

  このほど日本政府は、米国抜きのTPPは意味がないとしていた方針を転換し、米国以外の11カ国によるTPP協定発効交渉を始めると報道された。アジアで中国主導が強まることへの警戒もあるところ、日本が米国に代わってアジアで貿易自由化を進めてほしいという声があるからであるという(日本経済新聞 2017年4月15日)。
  現時点においては、TPPに対抗する中国の「一帯一路」構想が順調に進展している。商務部の発表によると、中国企業は36カ国に77の合作区(協力区)を設立し、ここに入居している企業は1,082社、そう生産額は506.9億ドル、受入国に10.7億ドルを納税し、現地人を17.7万人雇用しているという。中国—パキスタン経済回廊の建設も順調であると伝えられる。2017年1月には、中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)によるオマーン南部のドゥクム港の整備への2億6500万ドル融資の署名式が開かれた。
  冷戦終了後、グローバル化は急速に進展してきた。世界の貿易(商品輸出額)は、1991年には世界GDPの14.5%であったのが、2008年には25.5%へと増えている。全世界の対外直接投資は1991年に1,500億ドルであったのが、2016年には1.5兆ドルになっている。新興市場及び発展途上国の世界のGDPに住める割合も50%を超えるまでに増えてきている。グローバル化は、世界経済にとって有益であるという証左になる。
  ところが、ここにきて米国のTPP協議離脱、米国第一主義がトランプ米大統領により主導され、欧州の一部の国でも自国利益優先が強く主張されるようになってきている。
  このような環境の中で中国は、グローバル化を目指す。姚枝仲氏(中国社会科学院世界経済与政治研究所研究員)は、次のように述べる。
  「グローバル化のメリットは明らかである。市場が拡大し、専門化された分業が可能となり、高い生産効率及び生産要素の回収をもたらす。情報の基盤があって、情報交換することで、より速く知識が蓄えられ、科学技術が進歩する。多くの製品がもたらされるばかりか、旅行、より良い生活ももたらされる。このようなメリットは、個人、企業、国家に及び、もはやかつての封鎖的市場に戻り、閉塞した情報、単一の空間に後戻りすることはできない。」
  では、中国は、どのようなグローバル化の方式を目指すのだろうか。現時点においては、WTOやTPPのような多国間協議による共通システムを形成するのではなく、二国間協議による協力関係の形成が中心である。また、「一帯一路」構想自体が、政治的行動様式が契機となっているとも思える。この場合、確固たるグローバル化の基盤が形成されるかいささかの疑問がある。「一帯一路」構想を根付かせる協調システムの構築が必要である。

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