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(2006年8月28日)
全国至る所に貴重な文化遺産がある中国。その中国が<文物保護法>を制定したのは1982年(2002年に修正)、1985年には、<世界文化・自然遺産条約>にも加盟、既に文化遺産22を含む31項目が世界遺産に登録されていますが、最近の建設ラッシュや観光ブームの影響で、文化財の破壊や消滅といった事態が多発しています。盗掘も激しく、例えば古代生物の貴重な化石が大量に出土している内モンゴル赤峰市一帯は、既に無数の盗掘坑が掘られ、しかも公然と売買され、自ら発掘せず盗掘者に頼る研究者が後を絶ちません。まさに文化財保護が時間との戦いになっているのです。 2005年12月22日、国務院から<文化遺産保護強化に関する通達>が出され、同日から実施されました。<通達>はまず、2006年から毎年6月第2土曜日を<文化遺産の日>と定める、とし、全体目標として、2010年にはかなり整った文化遺産保護制度を確立し、2015年には歴史・文化・科学的価値を持った文化遺産が全面的な保護を受けられるより完璧なシステムを確立することを全体目標に掲げています。 今回、特に注目されるのは、非物質文化遺産に関する項目です。非物質文化遺産に関しては、既に2003年に<中国民族民間文化保護プロジェクト>がスタート、2004年には国連の<非物質文化保護条約>を批准し、2005年3月には国務院が<我が国非物質文化遺産保護強化事業に関する意見>を発表して具体的に取り組む姿勢を鮮明にし、一方で<非物質文化遺産保護法>制定の準備も着々と進めてきました。今回の<通達>はその非物質文化遺産保護を主要項目として重要視しているのが大きな特徴です。 物質文化とは様々な遺跡や建造物、壁画や彫刻、美術工芸品や図書・文献の類を言いますが、それに対し非物質文化とは、口承文芸・伝承技術・祭事も含めた伝承芸能など、代々受け継がれてきた伝統文化の表現形式や蓄積された技術・知恵を指します。<通達>はこれら非物質文化について、「一斉調査を実施し、認定・登録作業を各地区毎にしっかり行い、その種類・数量・分布状況・生存環境・保護の現状などを把握し公表し、3年以内にその作業を完了すること」を求めています。 次回はより具体的な状況について掘り下げてみましょう。
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