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Last Update:2017/5/24
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第332回 “一帯一路”構想と文化投資戦略

One Belt, One Road and Cultural Investment Strategy

(2017年5月24日)

  商務部の2015年末時点の中国の文化及び関連産業の対外投資は188.5億ドル、うち直接投資は127.9億ドルで、中国の対外直接投資の全残高の1.3%であった。まだ、対外投資残高に占める文化投資の割合は少ない。しかし、中国は、「一帯一路」構想を進める中で、対外文化投資に力を入れ始めている。
  2015年には文化産業分野の海外投資が活発になってきた。年間に21件、32.3億ドルのM&Aを行い、同年の対外投資M&A総額の5.9%を占めた。
  2015年3月に国家発展改革委員会、外交部及び商務部は「シルクロード経済ベルトと21世紀海上シルクロードの共同建設推進のビジョンと行動 」を発布した。この中で、重点的に沿線各国と文化交流を強化し、文化産業協力を積極的に展開し、協調・友好的文化生態の新たな構築を図るとしている。
  2016年の対外文化貿易及び投資は、大きく伸びた。このうち文化製品の輸出総額は786.6億ドルで輸入額の98.6億ドルの8倍にのぼっている。文化サービス輸出・投資のうちでは、レジャー及び広告サービスが多いが、文化体育及び娯楽産業の対外投資が39.2億ドルと対前年比188.3%もの伸びを示している。図書、映画、電子ゲームなどの売行きが好調である。
  大連万達(ワンダ・グループ)が英映画館チェーンのオデオン・アンド・UCIシネマズを買収したのが代表的な事案である。万達は、米ハリウッドでも映画やテレビ番組の製作会社などのM&Aを仕掛けていると伝えられている。中国企業による英サッカークラブ「ウルバーハンプトン」や伊サッカークラブ「インテル・ミラノ」の買収などもある。
  孔子学院は、中国政府が力を入れている文化投資の中の典型的なものである。2015年12月1日現在で世界125カ国・地区に500の孔子学院が設置されている(李嘉珊・宋瑞雪「“一帯一路”倡議背景下中国対外文化投資的機遇与挑戦」国際貿易、2017年第2期、56頁)。アジアに110校、アフリカに46校、欧州に169校、北米に157校、オセアニアに18校である。
  ただ、文化投資にボトルネックがあることも認識され始めている。第一に、(1)中国企業に国際的価値観に対する認識が欠如しており、貿易・投資自由化の原則に対する認識不足もあることである。第二に、(2)中国政府の支援、とりわけ資金、出入国管理、海外投資保護についての支援が十分でないことが指摘されている。
  また、中国文化投資を受け入れる外国側にも中国政府や企業に対する警戒感がある。中国の文化投資が、しばしば中華文化の価値観を押し付けようとしている感があるからである。外国の文化と融合しようという姿勢が必ずしも見えてこない。この点において、自国文化や魅力を広げるソフトパワーに欠けている。
  “一帯一路”構想の成否もハード面だけでなく、文化面で相手国と融合できるか否かという視点が重要なポイントになる。

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