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Last Update:2017/6/14
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第333回 “一帯一路”構想の始動とPPP

Start of “One Belt, One Road” and PPP

(2017年6月14日)

  チャルマーズ・ジョンソン(Chalmers Johnson)は、1982年に国家が政策条件や環境をコントロールして経済発展をさせるという理論を「開発=発展指向型国家」(Developmental State)モデルとして発表した。日本は、開発国家の典型的なモデルである。ローレンス・クライン(Lawrence Klein)は、日本の産業(立地)政策の有効性を評価していた。
  2017年5月14、15日の2日間、北京において“一帯一路”国際フォーラムが開催される。“一帯一路”構想が米国の支持も受けて、いよいよ本格的に始動し始めそうである。
  このように言うのは、“一帯一路”国際フォーラムに米政府からも代表を派遣することになったからである。5月11日に米中両国政府によって、貿易不均衡の是正に向けた「100日計画」の具体策が発表されたからである。米商務省によると、重要な内容には、(1)中国は米国産牛肉の輸入を2017年7月16日までに始め、(2)金融分野で中国内での海外企業による格付け業務や米金融機関による債券引き受け・決済業務などの参入を認め、(3)米国は液化天然ガス(LNG)の輸出に際し中国を他の自由貿易協定(FTA)を結んでいない国と同等に扱うと言う(日本経済新聞 2017年5月12日)。米国政府が、この「100日計画」を好意的に評価したので、「100日計画」の米中合意文書で、米国は、中国の“一帯一路”構想の重要性を認識するとも明記されることにもなった。
  そこで、“一帯一路”国際フォーラムにおいて何らかの発展モデルの仕組みが語られるかも知れない。中国はどのような発展モデルを打ち出すのだろうか。中国が国内で推し進めている社会主義市場経済モデルとは多少異なる様相を示すことになるだろう。
  中国が主導して“一帯一路”構想を実現しようとするとき、どのような発展モデルを描こうとするのかが重要になる。開発国家モデルでもなく、市場モデルでもない新モデルが生まれる可能性もある。
  実務的には、“一帯一路”構想では、PPPモデルが多用されることになるのではないか。PPPとは、Public Private Partnershipsの略称で、公共サービスの民間開放のことを言う。経済構造を戦略的に調整しようとするもので、公共サービス、資源環境、生態建設、インフラなどの重点分野の投融資制度を刷新することができる。政府の財政負担、納税者の負担は少なくてすみ、事業運営上の責任も多くが事業者である企業に担われることになる。
  “一帯一路”構想を推進する上で、中国にとっては「政策的意思疎通、設備の連携、貿易の円滑化、資金の融通、市民のコミュニケーション」(政策溝通、設施聯通、貿易暢通、資金融通、民心相通)を図ることができるか否かが重要な課題となる。

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