Contribution to globalization of China and consciousness to Japanese Firms
(2017年6月28日)
Anna Ashton(Director, Business Advisory Services)は、トランプ政府が貿易経済政策において不透明であるところ、一方で中国は知的財産権の保護などにおいて問題が存在するものの、国際経済貿易のグローバリゼーションに貢献していると評価する(Anna Ashton, Recent Developments in China’s International Trade Engagement, USCBR, May 30,2017)。
中国は、“一帯一路”構想により世界経済の資源再分配をリードしていきたいという思惑もあるだろう。しかし、これには少なからず課題が存在することも事実である。
王国剛中国社会科学院金融研究所所長は、「2010年に中国の名目GDPは5兆8,786億ドルとなり、日本を超えて世界第2位の経済体になった。……しかし、中高度の経済成長率を維持するには、なお厳しいチャレンジをしなければならない。」と言い、以下の課題を指摘している(「“一帯一路”:探索全球経済資源配置新路」経済参考報 2017年6月8日)
第一に、(1)一人当たりの自然資源が少ないことである。第二に、(2)貿易の経済成長に対する貢献度が低いことである。第三に、(3)国際投資が甚だしく少ないことである。
とりわけ大きな問題は第三の国際投資不足であろう。2004年から2013年までの10年間に中国の国際投資は2,764億ドルから1兆9,960億ドルと7.22倍になった。しかし、直接投資はわずかに527億ドルから6,605億ドルになっただけである。海外直接投資は、一国のグローバル経済力をはかる指標の一つである。中国は、この点において遅れていると言える。
現時点でGDPでは中国の半分の規模になった日本であるが、2015年3月時点の日本の海外投資は748兆7,889億円(1ドル120円とすれば6兆2,399億ドル)で、中国をはるかに凌いでいる。また、日本の海外投資の伸び率も高い。2003年の日本の海外投資は312兆9,300億円だったのが、2015年3月には約750兆円になっている。とりわけ直接投資(グリーンフィールド投資)が増えている。このことは、この間に日本のグローバル経済における資源分配力が高まったことを示す。中でもアジア地区(とりわけ東南アジア)への投資が多く、プロジェクト数、投資金額、経験が積まれていることを感じさせる。
王国剛は、「日本は、中国がアジアで海外直接投資を展開するときの強力なライバルとなる。」と言う。中国は、世界でグローバリゼーションをリードしようとしているが、このとき日本企業の海外投資の経験や技術力において支援を求めたい場面が多くなるのではないかと考える。