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LastupDate:2008/10/22
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第124回 農民の権利と農村改革
―山東膠州土地合作社の事例

(2008年10月22日)

  2008年10月9日から12日までの間、北京において中国共産党第17期中央委員会第3回全体会議(3中全会)が開催された。同会議において、「農村改革・発展の推進の若干の問題に関する中共中央の決定」が審議され、採択された。
  都市住民と農民との所得格差が、3.33対1と大きく、不平等が拡大しているところ、2020年までに農民1人当たりの収入を2008年比倍増させ、都市住民と農民の所得格差を是正するためにはどうすれば良いかを検討することが、3中全会における最大の議題であった。
  今後、農村改革は、どのような方向に進むのか。弱者である農民の権利をどのように保護しようとするのか。この問題は、中国経済の安定的な発展を維持し、社会不安を解消し、共産党が目指す和諧社会(調和のとれた社会)を実現する上で、現時点における最も重要な課題である。
  山東膠州市では、全国に先駆けて農村改革の試みとして「土地合作社」という組織が形成されている。以下、山東膠州土地合作社の事例を紹介する。農村改革の方式にはさまざまなものがあると思うが、山東膠州土地合作社の事例から、現在の農村の抱える課題と改革における課題が浮き上がってきそうである。
  膠州市は、2008年初に「進一歩推進農村土地承包経営権流転加快発展規模経営的意見」(農村の土地請負経営権の移転をさらに推進し規模経営を迅速に発展させる意見)を発布した(経済参考報 2008年10月17日)。これは、農民に請負の移転、リース、互換、譲渡、株式化など多様な方式によって土地請負経営権を移転させようとする考え方を述べた意見である。
  膠州市は、対外開放に伴って外資企業の設立も多く、例えば、膠州市膠北鎮では2007年末に170社の外資企業が設立され、周辺の農民約5000人がこの外資企業で雇用されている。青年の多くは、工場労働者になっている。農地で耕作をすることを嫌う者も多くなっている。しかし、一方で他人の請負地を再請負し、機械化農業を進めて大規模な経営をすることで効率化を図る農民も出てきている。
  そこで、このような実情に合わせて農地請負経営権を自由に移転できるようにし、現代的な農業、大規模農業を行おうという考えが出てきている。
  山東膠州土地合作社は、農民の請負地を株式化した土地株式合作社というようなものである。これは、具体的には以下のような方式である。合作社は、農民に最低配当として毎年1ムー当り450元を保証し、その他必要経費(コスト)を控除した後、なお利益がある場合には、その利益の40%を合作社の発展基金とし、残りの60%を農民に増配する。合作社への加入、退社は自由である。
  膠州市には、すでに36の土地合作社が設立されている。しかし、まだ、法人格が認められる存在とはなっていない。合作社の定款もなく、董事会、監査役会、株主総会の職能も不明確であり、経営上赤字が生じた場合の処理方法、リスクマネジメントに関する考え、農民が退社する場合に株式の評価額が減少している場合の処理方法など経営システムが構築されていないという問題がある。
  農村改革、土地改革は、まだ始まったばかりであり、各地で改革案が試行錯誤されている段階に過ぎない。今後、いろいろな改革案が試みられる中で、適切な改革制度がいくつかに集約されてくるということになるのかも知れない。
  山東膠州市は、多くの外資企業も設立されており、農村といっても都市近郊の農村である。所得格差が真に問題となるのは、内陸部の農村である。内陸部農村には、都市近郊の農村よりもさらに深刻な問題がある。そもそも荒廃した農地で、機械化、大規模経営をしようにもできないといった条件の下で、どのような改革が可能であるのか。この内陸部における農村改革、土地改革については、まだあまり伝えられるものがないが、弱者である農民の権利保護、社会不安・不平等の解消という視点から注目しておきたい。

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