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LastupDate:2010/3/24
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第159回 中央企業における職工董事(従業員取締役)

(2010年3月24日)

  2009年3月30日に国務院国有資産監督管理委員会(以下、「国有資産委員会」という。)が「董事会実験中央企業の職工董事の職責履行管理弁法」(以下、「弁法」という。)を公布、施行してから間もなく1年が経過する。
  職工董事(従業員取締役)とは、如何なる制度であり、この1年間どのように機能して来たのか、当該制度の今後の執行はどうなるのか、外資企業への影響はあるのか。こうした点について、考えてみたい。
  職工董事とは、会社の従業員が従業員代表大会において職工董事として選出されたものである(弁法3条)。これは、国有資産管理委員会が出資者としての職責を果たすために董事会制度を実験的に実施している中央企業に対して適用するために(弁法2条)、会社法、工会法(労働組合法)、国有独資公司董事会実験企業職工董事管理弁法(試行)などの関係規定に基づき制定したものである(弁法1条)。
  職工董事は、会社定款または董事会規則により、職工董事の特段の職責が具体的に規定される(弁法6条1項)。実務上、職工董事の主な職責は、会社の従業員採用、報酬制度、労働保護、休息休暇、安全生産、従業員教育および福利厚生など従業員の切実な利益にかかわる基本的制度の制定および改正についての董事会決議に参加し、意見を述べることにある(弁法6条2項1号)。
  2010年3月11日に国有資産委員会の主催により、董事会実験中央企業の職工董事職責履行報告・座談会が開催された。全国16の中央企業で職工董事の実験が行われているが、この職工董事らによる報告が行われた。この会議の内容については報道されていないようだが、コーポレートガバナンスを整備する新たな制度として注目されていることは間違いない。
  2009年11月に全国総工会民主管理部が、一部の省市において職工董事・職工監事(従業員監査役)制度に関する現状調査を行った結果が簡単ではあるが報道されている。この調査は、中央企業だけを対象としたものではなく、2以上の国有企業またはその他の2以上の国有投資主体が投資して設立された有限責任公司(このような要件の企業は、会社法の規定により董事会のメンバーに従業員代表を職工董事として参加させなければならないとされている。)およびその他の有限責任公司および株式有限公司で董事会に従業員代表を職工董事または職工監事として参加させている企業に対する調査である。この調査によると、職工監事は広く採用されているが、職工董事を制度として導入している企業は、ごく少数である。多くの企業は、職工監事が任命されていれば、従業員の権利保護には十分であると考えていることによる。
  ただ、このような認識には誤りがあると指摘されている。この認識の誤りとは、職工監事には董事会に参加する権利はあっても、議決権はないところ、職工董事には議決権があり(弁法8条5号)、その権限の重みが違うということである。会社の経営者層が従業員の利益に関わる重大な問題について検討しようとする場合には、必ず職工董事をこの会議に出席させなければならないということも定められている(弁法11条1号)。
  外資企業には、現時点において職工董事を設置しなければならないという規定も要請もない。それでも会社法制の一元化という方向性を考えると、外資企業も中央企業ほかにおける職工董事の動向について関心を持って見守る必要があると考える。


次回は4月14日(水)の更新予定です。

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