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LastupDate:2010/1/13
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第154回 2010年の対外経済貿易政策の展望

(2010年1月13日)

  2010年、世界経済は思ったよりも順調な回復を示しそうだ。IMFは、昨秋に2010年世界経済の実質成長率を3.1%、先進国は1.3%、新興国および発展途上国は5.1%と予測したが、上方修正しそうだ。
  こうした中、2010年に中国はどのような対外経済貿易政策で臨もうとするのか。政策を立案する上で、中国が着目している政策決定因子について検討し、ここから策定される対外経済貿易政策について、簡単にまとめておきたい。
  商務部によれば、対外経済貿易を発展させる上では、なお不確定な因子が存在するという。以下の不確定因子が気になるようだ。
  第一に、(1)世界経済が回復基調にあるとはいえ、外需が大幅に拡大することには必ずしも大きく期待できない。第二に、(2)保護貿易主義の拡大である。IMFの予測によれば、2010年の世界貿易の伸びは2.7%である。これは世界経済の成長予測よりも低い。このほかに国際経済貿易摩擦という問題もあるだろう。第三に、(3)世界市場における競争の激化である。第四に、(4)国際大宗商品価格の変動が大きく、企業にとっての経営リスクが増大していることである。
  以上のような因子を考慮して、2010年にはどのような対外経済貿易政策が立案されるのか。2009年12月24日に商務部は、全国商務工作会議を開催した。この会議において商務部長の陳徳銘は、「真剣に中央経済工作会議の精神を実行し、商務事業の科学的発展推進する」という報告の中で、対外経済貿易・外資利用について次のような発言をしている。
  対外経済貿易政策は、次のとおりである。
  第一に、(1)貿易を安定的に成長させる。輸出拡大のために輸出還付税政策を維持し、輸出信用保険(貿易保険)の付保率を拡大し、大型のプラント設備輸出融資を拡大する。
  第二に、(2)対外貿易構造の調整をし、発展方向を転換する。農業・軽工業・紡織、自動車および同部品、ハイテク製品の輸出基地および国家級の研究センターを育成し、国外の著名ブランドの活用、M&Aなどにより外国企業の経験を学び、販路を拡大し、さらには自主的な輸出販路を開拓する。このために自主的な知的所有権、自主ブランド、高付加価値商品を創造・開拓し、輸出を拡大する。
  第三に、(3)内需に必要な製品の輸入を拡大する。
  第四に、(4)新興国の市場を積極的に開拓する。中国輸出信用保険会社の発表によると、2009年の引受額は約930億ドルで前年比2.2倍増であるという。この伸びは、中国企業が新興国・途上国に進出する際に付保していることが大きな理由である。
  第五に、(5)中国企業の海外進出(走出去)を支援する。
  外資利用については、次のとおりである。
  第一に、(1)新たな外資導入分野を形成する。サービス業の開放、医療機関および職業教育訓練機関の設立を奨励する。環境技術関連の外資導入を奨励する。また、外資の投資方式として、証券投資、企業買収を規整し、外資のベンチャー投資、株式投資を奨励する。
  第二に、(2)外資投資の産業構造および立地を適正化する。ハイエンド、ハイテク、新エネルギー、省エネルギー、環境保護、サービス業などの分野を外資導入の重点分野とし、多国籍企業が地域本部やR&Dセンターを中国に設立することを奨励する。
  外資誘致のために、投資環境を一層改善する。外商投資の許認可手続きを簡素化し、手続きを標準化し、法律法規を整備し、管理・サービス体制を整備するという。
  以上の2010年の商務部の対外経済貿易政策は、必ずしも単年度のものではない。中国の対外経済貿易政策の方向性は、今後も同様のものとなるであろう。


次回は1月27日(水)の更新予定です。

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