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LastupDate:2009/11/25
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第151回 炭鉱企業の合併再編による事故防止策の必要性

(2009年11月25日)

  黒竜江省鶴崗市の炭鉱で2009年11月21日に大爆発が起こり、100人以上の生命が奪われた。全国各地で同様の事故が起こっている。
  (1)なぜ、このような事故が多発するのか。(2)このような事故を防止するには、どのような政策措置が必要なのだろうか。
  (1)このような事故が多発する原因は、炭鉱を乱開発する小規模企業主の存在がある。年産30万トンにも満たない炭鉱が無数に存在し、安全確保を無視した生産が行われている。
  全国の石炭生産量の4分の1を生産する山西省は、2007年末時点で2,840の炭鉱があったが、このうち70%以上が年産30万トン以下の民営の小規模炭鉱であった(中国民商事法律網 http://www.civillaw.com.cn/article/default.asp?id=46892)。以下、山西省に関する情報は、中国民商事法律網による。)。
  小規模炭鉱は、安全生産をしようとする意識が著しく遅れており、山西省の炭鉱事故による死亡者数の70%は年産量が100万トン以下の小規模炭鉱で発生しており、その死亡率は100万トン規模以上の炭鉱の17.8倍になる。
  では、なぜ炭鉱の小規模な乱開発が発生しているのか。小規模炭鉱の事業主によれば、「採掘権は白粉の購入価格(高価)だが、石炭の販売価格は白菜の価格(廉価)にしかならない」という。このために利益確保をしようとすれば、安全などは度外視した採掘をしなければならないのである。
  結果として、全体的には資源の浪費、環境破壊、人命軽視、幹部の腐敗ということを引き起こすことにもなっている。
  (2)このような現状を改善するため、山西省は2009年4月に「石炭企業合併再編工作指導チーム」を発足させた。このチームは、以下の事業計画を立案し、推進している。
  2010年内に全省の炭鉱数を1,000に減少させ、1炭鉱当たりの年産量を90万トンとし、3つの年産1億トン規模の炭鉱と4つの年産5,000トン規模の炭鉱を4か所にし、大企業集団の生産量が全省の生産量の75%を占めるように計画している。2015年までに炭鉱事故による死亡率を0.1人以下にしたい考えである。
  では、この計画を実現するためには何が必要か。山西省には、2,000もの民営企業(小規模炭鉱事業主)がある。彼らが採掘権を購入したのは事実であるから、企業の合併再編を進める場合には、採掘権を各炭鉱の採掘可能資源量に応じて再評価し、さらに一定程度の経済補償を手当てすることで採掘権の譲渡・返還に応じてもらう必要がある。事業主には、業種の転換を促すための支援もする必要がありそうである。
  企業経営者の金もうけ主義、コンプライアンスの欠如という問題がある。彼らに企業コンプライアンスの意識を確かに持ってもらう必要がある。採掘権がなく無権限でも違法に採掘をしている事業主もいる。違法者の取り締まりも不十分である。行政処分を科しても処罰が緩く、違法行為をしていたほうが得であるということもある。小規模炭鉱の採掘に対して、この権利を許可した行政部門の問題、しばしば賄賂の収受による許可という行政幹部の腐敗の問題もある。
  しかし、それ以上に根源問題の解決が必要である。内陸部の炭鉱地区は、沿海都市の対外開放、発展を促進するために、極めて安い、生産コストを下回る価格で国に石炭を買い上げられていた。長年の歪みが炭鉱爆発事故として顕在化してきているようである。内陸部には、自らの発展機会が与えられていなかったという体制上の問題がある。この根源問題について、中央政府も認識するようになったが、その改善を図ることに関してはまだその緒についたばかりである。


次回は12月9日(水)の更新予定です。

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