7 チャイナウォール -中国人の法意識- 第147回 会社の内部統制メカニズムと董事会の制度設計
 

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LastupDate:2009/9/24
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第147回 会社の内部統制メカニズムと董事会の制度設計

(2009年9月24日)

  2009年9月に開催された中国共産党第17期中央委員会第4回会議(4中全会)は、「党建設の強化・改善に関する決定」を採択した。党建設強化・改善のために取り組まなければならない大きな柱として指摘されたことは、「党内民主」、「汚職対策」であった。
  党運営と同様に上場会社の運営においても「民主的経営」、「汚職防止」といったことが今、問題となっている。
  このとき董事会(董事、董事長、独立董事)、監事会、高級管理職(総経理など)といった会社の機関設計をどうするかについての検討、議論が行われている。前回のコラムで従業員による企業の民主管理の問題について紹介したが、今回は、董事会の現状と課題について述べてみたい。
  現在、中国の企業統治は不完全であり、健全であるとはいえない側面がある。上場会社は、(1)大株主により支配されており、中小株主の利益が保護されておらず、(2)董事会は大株主とその内部統制者により支配され、(3)監事会は、実際上は董事会のコントロール下にあり、(4)独立董事の人数が少なく、董事会の有効なチェック機能を果たしていないということがある。
  上場会社の内部統制メカニズムに対する調査(国家貿易経済委員会と南開大学国際商学院が実施した「関于国有企業経営者制衡機制研究調査」)によると、上場会社の75.24%が董事会の指導の下に総経理責任制を実施しているという。このことが問題であるのは、総経理は大株主の派遣した董事が兼務している場合がほとんどであって、実際上、大株主が経営についても完全に支配しているということになっているからである。
  このために、上場会社の経営においては、実質的に大株主が董事会を支配し、大株主である会社や董事が、自己・関連取引を行うことを許し、彼らが自らの利殖を図り、さらにこのために贈収賄が発生するという状況が見られる。
  そこで、董事会制度の整備が会社の「民主的経営」、「汚職防止」、そして「中小株主保護」、のために必要であると考えられるようになってきている。
  上場会社の内部統制メカニズムを健全にするために、株主会、董事会、経営層の機能を分離し、明らかにする必要もあるだろう。「調査」によると、(1)67.26%が董事会、株主、経営層の十分に有効な戦略決定への参与を保証し、戦略の科学性を高める必要があるとし、(2)23.01%が董事会の管理層に対する有効な監督と規制を保証する必要があるとし、(3)7.08%が董事会の干渉を減らし、管理層の自主決定権を保証する必要があるとしている。
  会社法および上場会社統治(治理)準則には、董事会の下に執行委員会、監査委員会、報酬委員会、指名委員会および公共政策委員会の5つの専門委員会を設置することができるようになっているが、実際にこれら委員会を設置している会社はほとんどない。
  今後、独立董事によって構成された専門委員会の設置を積極的に推進し、この専門委員会と通じて企業経営を民主的、科学的にしていくことが、中国における会社の内部統制メカニズムのあり方、機関設計をしていく上での中心的な議論になってくるように思われる。


次回は10月14日(水)の更新予定です。

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