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(2009年8月26日)
国務院は、2009年8月12日に「規画環境影響評価条例」(プロジェクト環境アセスメント条例。以下、「条例」という。)を公布した。この条例は、2009年10月1日から施行される。 前回のコラムで環境被害について損害賠償を求める訴訟が増え、また、市民の環境問題を意識した行政の対応も徐々にではあるが生まれつつあるということを紹介した。この条例は、市民参加型の環境アセスメントを促すものでもあるという特徴を有している。 条例は、全6章36条から成る。1章総則において条例の意義、目的、原則を述べた後、2章で環境アセスメントの評価方式、3章で作成された環境アセスメントの審査方式、4章で規画(プロジェクト)実施後の追跡評価方式、5章で法律責任、6章で付則を規定している。 すでに2002年に環境影響評価法が制定され、この中でプロジェクトに対する環境アセスメントの方式について規定されている。しかし、現実の問題として、(1)環境アセスメントがなされないままにプロジェクトが実行に移されるということがしばしばあり、(2)環境アセスメントの手続、内容、根拠などについて十分に具体的な方法が規定されておらず、このために環境アセスメントの質が不十分であり、(3)環境アセスメント報告書の審査主体・内容・手続・効力が不明確であり、(4)このために審査をしてプロジェクトの欠陥が指摘されてもプロジェクトの実施主体からなおざりにされることがあり、(5)プロジェクト実施後の追跡評価手段もないということがあった。 そこで、こうした問題に対処するために条例が制定された。 この条例により評価、審査、追跡評価の対象となるプロジェクトは広範である。土地利用に関係のあるプロジェクトおよび区域・流域・海域の建設・開発利用プロジェクト、また、工業、農業、牧畜業、林業、エネルギー、水利、交通、都市建設、観光、自然資源開発に関する専門プロジェクトが含まれる。 この条例の特徴として特筆できるのが、以下の諸点である。 第1に、公開が原則とされることである。これによりモニタリングが強化されることになる。 第2に、評価に際しては、(1)環境および人民大衆の健康に及ぼす長期的な影響、(2)プロジェクトの経済的効果、社会的効果と環境に及ぼす影響との間の関係についても短期的効果・影響だけでなく長期的な効果・影響を検討するとしていることである。 第3に、評価、審査、追跡評価に際しては、単に関係機関や専門家から意見を求めるだけでなく、座談会や聴聞会などの開催を通じてパブリック・オピニオンを広範に聴取し、市民の意見を十分に反映させるようにしようとしていることである。より直接的に市民が評価、審査、追跡評価に参加する方式も考えられることになるだろう。 今後、この条例に基づき、各省・自治区・直轄市人民政府が、当該行政区内の県級人民政府に具体的な仕組み作りを要請していくことになる。そして、各地で具体的な弁法が制定されることになる。 市民の監視も厳しくなっている中、どのような弁法が制定されることになるか。弁法の制定にも市民は厳しく監視をしていくだろうか。今後の動向が注目される。
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