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(2009年8月13日)
工業の発展過程にあって、様々な環境汚染問題が深刻となっている。こうした中で環境被害について損害賠償を求める訴訟が増え、また、市民の環境問題を意識した行政の対応も徐々にではあるが生まれつつある。 2009年7月28日に貴州省清鎭市人民法院は、中華全国環境連合会(国家環境保護総局傘下の団体)が清鎭市土地管理局の許可した飲料工場建設に伴う地元飲料水の汚染問題に関して、土地管理局を相手取った訴えを受理した(China Daily、2009年7月31日)。 この訴えは、中華全国環境連合会が地元住民の要請に基づき提起したもので、このような形式の訴えは中国で始めてのものであるという。もっとも同連合会は、例えば江蘇省無錫市で企業を相手取った訴訟などで勝訴判決を得ているという実績がある。 環境保護に対する市民の意識は向上しつつある。このため行政も市民の要求をお座なりに処理することはできなくなりつつある。 深圳市では、このほど騒音地図(Noise Map)が作成された(China Daily、2009年7月30日)。深圳市の約4分の3の市民が、騒音問題に対する不満を有しているという。この不満の程度は水質、大気、土壌汚染の問題よりも多い。 騒音の程度は、夜間の住宅街でも大通りに面しているところでは、65〜70デシベルにも達し、これは国が制定した基準よりも10〜15デシベル高い。深圳は、2000平方キロメートルの範囲に約870万人が住むほどの人口稠密都市である。ここに工業団地なども集積するので、工場稼働や交通量の増加などによって当然のように騒音のレベルが高まっている。 市民の声を受けて、深圳市政府は、騒音地図を作成した。騒音のレベルによって静かな地区(10デシベル以下)を紫、交通量が多く極めてうるさい地区(100デシベル以上)を赤というように色で騒音レベルを0から120デシベルにまで分類し表示する。40デシベルが静かなオフィスのレベルで、60デシベルはソフトなラジオの音楽程度のレベル、70デシベルは掃除機を使用しているときの音量というようなレベルに分けられている。この騒音地図は、市民の間で好評のようだ。 騒音問題は、今後、深圳市だけでなく全国の都市で深刻な問題になるだろう。このとき、建設工事現場で使用する防音壁などの問題も考慮する必要が生じるだろうと都市計画作りの専門家は言う。 北京市や上海市では、環境保護のため自家用車の交通規制をし、また保有制限をしている。このとき環境規制と財産権の保障の衝突、両者のバランスをどのようにとるかといった問題が生じることにもなるだろう。
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