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LastupDate:2009/9/9
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第145回 従業員による企業の民主管理

(2009年9月9日)

  中国における企業は、従業員参加型の経営方式を真剣に検討する時期に来ていると考える。このようにいうのは、全国総工会により以下のような通知が発布され、全国人民代表大会(全人代)常務委員会法政工作委員会も従業員参加型の経営方式について立法化していこうとする意識があるように思われるからである。
  全国総工会は、2009年8月下旬に労働組合・従業員代表大会を設立している企業・事業単位は、全国で156.7万社余にのぼったことを発表した。
  また、全国総工会は、「企業の制度改革・再編・閉鎖・清算に際してさらに民主管理工作を強化することに関する通知」を発布した。この通知において、「企業が制度改革をする際には、その計画案を必ず企業従業員代表大会または従業員大会に提出し、討議を経なければならず、従業員のリストラおよび配属計画など従業員の切実な利益にかかわる重大な問題については、従業員代表大会の討議を経なければ実施すべきではない。公開されず、また従業員代表大会の討議を経ていない決定は、無効とする。」と述べられている。
  そもそも2005年に改正された会社法18条には、会社は従業員代表大会またはその他の方式により、民主管理を実行するということが規定されている。また、とりわけ会社が制度改革および経営に関する重大問題を検討し、決定する場合には、必ず労働組合(工会)の意見を聴取し、従業員代表大会またはその他の方式により従業員の意見および提案を聴取しなければならないとも規定されている。
  2009年5月に施行された「企業国有資産法」20条は、さらに明確に「国が出資している企業の合併、分割、制度改革、解散、破産申請など重大な事項は、必ず労働組合の意見を聴取しなければならず、かつ従業員代表大会またはその他の方式により従業員の意見および提案を聴取しなければならない。」と規定している。
  ここには、従業員の企業経営に関する「知る権利」、「参加する権利」、「議決する権利」、「監督する権利」を保障しようとする方針が見られる。
  従業員参加型の経営は、ドイツやフランスでも例えば従業員代表が監査役に就任するなど多くの経験が積まれており、日本企業にはなじみがないかも知れないが悪い制度ではない。
  今日の中国の企業が一部の支配株主に掌握され、独善的な経営がなされたり、支配株主の関連取引などで自己の利益のみが追求されたり、商業賄賂の習慣がはびこるといった問題を監督・防止するという機能面からも上記の通知や立法の意味がある。
  全国総工会の通知には、必ずしも法的効力が認められるものではない。全国総工会の意向は、こうであるという性質のものである。それでもなお、全人代法政工作委員会行政法室の担当者は、企業制度改革に際しての従業員代表大会制度に関しては、十分に法的根拠があるという。従業員代表大会制度は、企業が民主的管理をする中で、必ず実施しなければならないものであるという。会社法、企業国有資産法には、「従業員代表大会またはその他の方式」により従業員の意見を聴取し、討議すると規定されているが、全人代法政工作委員会行政法室の担当者は、「その他の方式」というものはそもそも存在しないものであるともいう。
  このように言える法的根拠として、労働契約法4条2項の規定などが指摘できるのかも知れない。いずれにせよ、今後、中国政府は、従業員による企業の民主管理を推進し、従業員の企業経営に関する「知る権利」、「参加する権利」、「議決する権利」、「監督する権利」を保障する方向でさらなる立法化を進めてくるように想像される。


次回は9月24日(木)の更新予定です。

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