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LastupDate:2009/11/11
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第150回 外部董事(社外取締役)管理弁法の公布

(2009年11月11日)

  国務院国有資産管理委員会は、2009年10月13日に「董事会試行中央企業の専門外部董事管理弁法」(以下、「弁法」という。)を公布、施行した。
  この弁法を制定した背景は何か。外部董事とは何か。この弁法において、外部董事をどのように管理し、機能させようとするのか。
  三鹿集団による有害物質メラミン混入粉ミルク事件は、まだ記憶に新しい。事件の直接責任者である元董事長ほかには、裁判で死刑および政治的権利を終身剥奪する判決が言い渡された。しかし、これで問題が解決されたわけではない。
  このような事件を起こさないためには、企業に経営活動におけるコンプライアンスの意識を十分に持たせようとしなければならない。また、政府の責任についても明確にする必要があるだろう。
  このような認識の下、国有資産管理委員会は、2009年11月3日に「中央企業社会責任工作会議」を開催した。企業に社会的責任を十分に認識させ、機能させるようとするとき、コーポレート・ガバナンスの規範を確立する必要がある。そこで、重要な機能を果たす存在として、外部董事の重要性が認識されている。
  弁法は、国有資産管理委員会が出資者となり、その職責を担い、董事会を実験的に設置している中央企業において、国有資産管理委員会が外部董事について管理をし、就任条件を定め、選任・解任し、業務を評価し、報酬を決めることについて規律したものである。
  外部董事とは、日本でいえば社外取締役である。ただし、日本の社外取締役よりも会社との関係では独立性が強く、米国の社外取締役に近いものである。証券監督管理委員会は、2001年8月21日に「上場会社の独立董事制度の創設に関する指導意見」を発布している。この中で、独立董事について、次の通り規定している。上場会社の独立董事は、会社で董事以外のその他の職務に就任することがなく、また招聘された上場会社およびその他主要な株主との間で独立客観的な判断をすることを妨げる関係がない董事でなければならない。 この弁法の外部董事は、上場会社における独立董事に相当するものである。
  外部董事になれる資格としては、10年以上の企業経営に関して戦略・資金・法律などに関する管理経験があるなどの要件が必要である(弁法10条)。任期は、同一企業において6年を超えないものとする(弁法14条)。
  この外部董事に対しては、年度ごとに評価を実施し、また任期中の総合評価を実施する(弁法15条)。報酬は、国有資産管理委員会が決定し(弁法16条)、支払う(弁法20条)。年度評価および任期評価において、結果が好ましくなかったものは解任され(弁法22条2号)、董事会決議が会社の利益に重大な損失を及ぼすものであるのに、議決に反対しなかった外部董事は解任される(弁法22条4号)。
  以上のような規定を定めたのは、外部董事が真に会社から独立した存在として活動することを保障するためであろう。このため、外部董事の日常業務の管理などについては、国有資産管理委員会が関係機関に委託する(弁法8条)。この受託機関は、今後設置されることになる。
  現時点においては、中央企業において試行されるだけである。しかし、今後、この試行を経て、上場企業などその他の企業においても同様の制度が定められてくるものと考える。外部董事協会といったようなものが新設され、ここに登録された外部董事が、各会社の要請に応じて、会社に派遣されるようなシステムになってくるのであろうか。今後の実務の動向に注目したい。


次回は11月25日(水)の更新予定です。

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