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(2010年4月14日)
製品の品質および安全は、企業が成長し、存続していく上で最も重要な要素である。中国において、製品の品質・安全の監督システムはどのように形成されているのか。2010年7月1日から権利侵害責任法(2009年12月26日に第11期全国人民代表大会常務委員会第12回会議において採択、公布。日本で言う「不法行為法」に相当する。)が施行されるが、同法の施行は、企業における製品の品質・安全管理にどのような影響を及ぼすだろうか。 中国における製品安全監督システムは、製品品質法(1993年公布、2000年改正)により基礎づけられている。そして、政府および民間の関係監督部門が、品質の検査・品質認証・懲罰などの監督管理を担っている。 国家品質監督検査検疫総局は、2008年に2万204社の2万2214品目について抜取り品質調査を行った結果、合格率は94.18%であった。工商行政管理局は、2003年から2008年の間にニセモノ・劣悪商品63.35万件を摘発した。消費者協会は、2008年に438万人回のクレームを受理した。 最近発生した「三鹿粉ミルク事件」などの食品安全問題は、製品品質に関する典型的な事件である。 中国における製品品質に多くの問題が存在するのはなぜか。中国社会科学院の企業社会責任研究センターは、(1)企業の責任意識の欠如、品質管理の意識の欠如、(2)法制度の不備、罰則のあまさ、(3)企業内部の監督管理体系の不備、(4)品質基準の低さ、または基準の不在、(5)社会世論の力不足があると言う。 罰則のあまさということに関しては、例えば、製品品質法の規定では、違法商品として処分する場合、商品価値の3倍以下の罰金を科すとされているが、これは違法行為者が処罰されてもなお十分にコストに見合う基準になっている。2007年のデータでは、ニセモノを販売したことによる罰金は、実際にニセモノ販売で利益を得た金額の3分の1でしかないという。 このような現状にいかに対処するか。市民の生活の安全を保障することが急務の課題である。製品品質問題を予防し、発生した場合においてどのように処理するか。制度確立の必要性が言われていた。 そこで、権利侵害責任法の制定が急がれた。権利侵害責任法が制定された背景には、真っ先に「三鹿粉ミルク事件」の影響があったと言われている。 権利侵害責任法の中で製品責任について、次のとおり規定されている。 「製品に欠陥が存在したために他人に損害をもたらした場合には、生産者が権利侵害の責任を負わなければならない。」(41条) 「販売者の過失により製品に欠陥を生じさせ、他人に損害をもたらした場合には、販売者が権利侵害の責任を負わなければならない。」(42条) 「製品に欠陥が存在することを明らかに知りながら製造・販売を続け、死亡または健康に対する重大な損害をもたらした場合には、相応の懲罰的賠償の責任を負わなければならない。」(47条) 懲罰的損害賠償の額がどの位まで認められるのかについては明らかではないが、従来よりも罰則を厳格にしようという趣旨である。 今後、品質監督・管理の施策として、(1)品質安全問題があった企業および製品の公示、(2)市民からの通報制度の拡充などが実施されてくるものと考える。 企業は、社会的責任を意識した経営理念を強く持ち、企業内部統制システムを構築していく必要がある。
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