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LastupDate:2010/5/26
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第163回 インターネット取引の課題

(2010年5月26日)

  中国でネット取引が急速に拡大している。日本の中小企業も中国に店舗を持たずに中国市場に参入する機会が得られると、ネット販売に対する関心も高いものがある。
  このネット販売に問題はないのか。ネット販売の実際上の課題とトラブル防止のためのセーフティーネットの形成について検討する。
  あるトラブル事例がある(http://www.sootoo.com/content/30290.shtml)
  交通事故により下半身不随になった陳某(X)は、淘宝ネットを通じて劉某(Y)から車椅子を購入した。商品が自宅に配送され、これを開梱したところ商品は中古で、しかも全く使用できないことが判明した。
  Xは、車椅子の返品をYに要求したが、Yは品質には何ら問題がないと主張するだけで、Xの使用方法に誤りがあることが原因であるとして、取り合うことがなかった。
  そこで、Xは、淘宝ネットの消費者権益保護センターに申立てをし、Yとの交渉を仲介するように依頼した。淘宝ネットのクレーム処理担当者は、Yと交渉をしたが、Yは過去5、6年間も同様商品を淘宝ネットで販売しており、これまでクレームが生じたことはなく、今回のクレームはXの使用方法の誤りによるものであるとの主張を固持するのみであった。
  そこで、淘宝ネットのクレーム処理担当者は、「全国ネット商品購入保障計画」に基づく“先行賠償”制度を適用することとした。この制度とは、クレームを申し出た消費者に、まずクレームが成立するものとして損害を賠償し、その後にクレーム内容の適否を検証しようとするものである。Xは、この制度に基づき、損害賠償を淘宝ネットから受けた。
  淘宝は、このような売主と買主との間のトラブルについて、消費者の権益を保護するためのシステムを構築している。これにより売主と買主との間のトラブルは、ある程度まで回避することは可能である。
  しかし、これは淘宝ネットの自主的な制度であって、中国法においては、なおネット業者の責任および義務について明確な規定は存在しない。ネット販売を利用しようとする売主、買主である個人または法人は、その当事者間またはネット業者との間の権利・義務について十分に検討しておくことが不可欠である。
  ネット販売に関して、以下の問題点を指摘することができそうだ。
  第一に、(1)主体について規律されていないことである。特段の営業許可証を取得することもなく事業を始められるので、経営者の信頼性が明らかではない。第二に、(2)そうであるために違法な広告、ニセモノ商品の販売、契約詐欺、または著作権や肖像権の権利侵害行為などが発生していることである。第三に、(3)これらの違法取引などの調査・取締りが難しいことである。違法行為者の特定もなかなかできない。第四に、(4)この取締りのための法的根拠も不十分である。
  現在、インターネット・サービス営業場所管理条例、インターネット情報サービス管理弁法、無許可経営処分取締弁法などの関連法規があるが、まだ現実の取引の動きに適応しきれていない。工商行政管理総局は、インターネット商品取引および関係サービス監督管理業務を強化するための規定を準備中である。

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