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Last Update:2015/12/09
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第297回 未熟な市場経済に対する知識

Uneducated traders to a market economy

(2015年12月09日)

  国際通貨基金(IMF)は、人民元を特別引き出し権(SDR)に採用した。中国が金融関係を含めて経済の自由化を進め、これが進 展してきたことが評価されたということになる。しかし、中国政府の経済政策が完全に自由市場経済方式になったと言えるか否か、また、市民が完全に自由市場 に慣れているか否かというと必ずしもそうとは言えそうにない。
  象徴的なのが、12月2日の蓮花味精の「習銀平」の独立董事(社外取締役)就任発表および取消し事件である。
  上海証券取引所に上場している調味料メーカーの蓮花味精が、12月2日に習銀平を独立董事に任命したという発表をしたこ とが市場の関心を呼び、同社の株価がストップ高にまで急騰した。ところが、2日晩になって同社が習銀平の独立董事任命取消しを発表し、3日には株価が急落 した。
  中国の毎日経済網などのネットでは、習銀平は、習近平国家主席の父親習仲勲の弟習仲法の子供であり、習近平の従兄弟に あたり、1969年に陝西省富平県で生まれ、2007〜12年に国際環境保護連盟栄誉会長、2010〜13年に和諧中国陝西工作所秘書長、2014年に陝 西習仲勲研究会副会長、また、2013年から中国高層戦略協会西部発展弁公室副主任)に就任しているという。
  12月3日に蓮花味精の董事長(会長)夏建統は、習銀平独立董事事件について、「情報化時代に人々が様々なねじ曲げら れた情報をもって憶測をしたようだが、そのような意図はなかった。意図したのは、独立董事のいる完全な企業統治制度を設けた上場会社として習銀平を任命し たものである。ただ、起こったことには謝罪したい。政府が全力で清廉な政治の実行を推進していることを全面的に支持する。」と述べた。
  蓮花味精の意図が、夏董事長の発言どおりであるか否かは分からない。習近平にあやかりたいという意図がなかったとは考え難いだろう。
  中国政府は、企業の内部統制システムや会計基準などについての改善を推進させるようにしなければならない。また、これに 踊らされた市民投資家も問題である。中国市民は、市場経済の概念を正しく理解し、市場にはチャンスもあればリスクも存在することを認識しなければならな い。市場経済とは何か、株取引とは何かについて教育する必要もあるだろうが、これは政府の責務にもなる。
  中国政府は、2020年までにGDPおよび一人当たりGDPを2010年比で2倍にすることを目標にしている。このと き、単に2倍にするだけでなく所得格差を縮小しつつ、中所得層の人口比率を高めなければならない。経済成長の方式も政府の投資主導から消費主導型、サービ ス経済型に転換し、個人の消費に依存する割合が高まる。現時点位おける政府の改革および市民意識の未熟さは、所期の経済成長モデルに転換するには、なお課 題が多そうである。


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