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(2016年8月15日)
中国企業の海外投資が増えてきている。この1カ月内だけでも復星集団による英国のサッカークラブ「ウルバーハンプトン」の買収及びインドの製薬会社グランド・ファーマの買収、楽視網信息技術による米テレビ大手のビジオの買収、家電大手の美的集団による独大手ロボットメーカーのクーカに対するTOB、不動産大手の大連万達集団(ワンダ・グループ)による欧州最大手の英オデオン・アンド・UCIシネマズの買収などが報じられている また、外国企業の対中ビジネスもリスクを抱えながらも市場へのアクセスに対する期待が減少することはない。日本企業では、ANAホールディングスが日系企業の電子商取引(EC)通関支援事業を始める。ローソンは2020年までに中国の店舗を現在の4倍3000店に増やすと発表した。伊藤忠・タイCPは CITICCと中国で医療事業に参入する。日通はアリババと提携して国際ネット通販事業を始める。さらに、日通は、 欧州—中国間の鉄道輸送サービスを始める。これは、中国の“一帯一路”戦略構想も視野に入れたものである。 企業の事業展開は、中国との二国間事業だけでなく、第三国における共同事業にも発展してきている。 このときに注意しなければならないのが、国際投資紛争及び国際商事紛争、国際海事紛争が増えているということである。中国企業の海外進出では、“一帯一路”関連プロジェクトで中国企業と相手国政府との国際投資紛争が生じることが今後予想される。民間企業間の契約が履行されないということも少なからず存在する。 紛争発生時の解決法として、最も重視されているのが国際仲裁である。企業と投資受入国との間の紛争に関して、中国は締結している二国間投資協定の97%で国際仲裁を利用すると取り決めている。このうち38%は国際投資紛争解決センター(ICSID)仲裁によるものである。企業間の紛争については、外国仲裁判断の承認・執行に関する国際条約(ニューヨーク条約)により処理されることが一般的である。 こうしたことから今、中国の国際仲裁機関は、主に“一帯一路” 沿線国及び環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)メンバー国の仲裁機関を訪問・交流をし、実務的手続きなどに関する研究を進めている。 日本企業が中国企業と契約をする場合、そして中国企業との共同事業として第三国で事業を行う場合には、紛争発生時の解決法としてどのような法的手続きを選択するか検討しておく必要がある。また、国際仲裁による場合には、仲裁地・仲裁機関・仲裁規則の選択について十分な検討をし、紛争解決の先例を研究し、結果についての予測をしておくことも必要である。
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