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Last Update:2016/07/13
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第311回 行政公益訴訟の進展

The Progress of Administrative Public Interest Litigation

(2016年7月13日)

  日中比較法研究会(代表:梶田幸雄)は、2016年7月8日に一般財団法人国際貿易投資研究所と共催で「日本と中国の法治建設」をテーマとするシンポジウムを開催した。
  シンポジウムには、中国から何勤華・中華司法研究会副会長(前華東政法大学学長、国家傑出貢献専門家)、魏琼・華東政法大学教授、及び江利紅・華東政法大学教授が来日し、パネリストとして基調報告を行った。
  何教授は中国の司法改革の現状について、魏教授は行政訴訟法改正と行政独占の問題について、江教授は中国の法治建設について、それぞれ報告をした。
  ここでは詳述できないが、中国の法治建設、司法改革の現状を理解する上で、全体の共通項として興味深い問題である行政公益訴訟の進展についてごく簡単に紹介したい。
  2013年から司法改革がスタートし、2014年に行政訴訟法が改正された。中国が社会主義市場経済を進める上で、行政機関・事業体による市場独占が少なからず存在し、平等な競争を阻害しているということは周知のとおりである。行政訴訟法改正により、地方政府の地元企業に有利な地方条例を制定している場合には、国民や企業(外国企業も含む。)の訴えにより、これが排除されるようになった。すでに韓国企業から国家発展改革委員会に河北省の高速道路通行料徴収に関して、行政独占ではないかとの指摘があり、発展改革委員会が河北省政府に廃止命令が出された事案がある。
  2016年6月14日には「市場経済体系建設平等競争審査に関する意見」が発布され(7月1日から施行)、行政独占に関わる地方条例などについては上級機関が事前に審査をするようにもなった。
  2015年12月、山東省慶雲人民検察院は、地元環境保護局が慶順化学科技有限公司の工業汚染排出に対して適切な措置を講じていないとして、環境保護局を訴えた。最高人民法院は、2016年4月までに12件の行政公益訴訟を受理している。この中には、貴州省検察機関が2016年1月に環境保護局を地元の企業7社の汚染水の河川への排出に対して措置を講じていないとして訴えた事案などがある。
  行政公益訴訟に関しては、市民の最大の関心事である環境問題で環境保護局が汚染者を積極的に取り締まることをしていないとして、検察機関が市民サイドに立って訴訟を助けることが最も多くなりそうである。最高人民法院は、2015年12月に地方検察機関は環境汚染または食品安全問題について、政府機関を含める何人に対しても提訴することができるという通知を発布している。
  今後、行政訴訟法の改正を受け、行政独占など市場経済に関わる行政公益訴訟も多くなってきそうである。このような司法改革が進展している。

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