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(2016年5月11日)
中国ビジネスで持続的成長を図るために最も重要な問題であり、かつ悩ましいのは相変わらず適切な人材の採用と人事労務管理である。 Morgan Philipsは、2015年12月から2016年1月にかけて労働者に対する意識調査を実施した(Morgan Philips Executive Search 2016 Talent Survey Pictures a “New Normal” of the Executive Job Market in Greater China)。 この調査によると、中国において転職する労働者は依然として多い。1年内に転職するという者が男性で16%、女性で22.5%にのぼる。彼らの転職動機は、高い報酬を得るためという割合が低下し、キャリア形成、知識・技能習得機会、ワーク・ライフ・バランス、理想的な企業文化を求めてという割合が高くなってきているという。また、併せて勤務地、良好なコミュニケーションの形成が重要である。 中国進出企業は、このような労働者の意識の変化に留意しなければならない。従来と同じ人事労務管理ではうまくいかなくなる可能性がある。 コミュニケーションに関しては、同僚とのコミュニケーショはもちろんだが、それ以上に上司とのコミュニケーションが重要になっているという。中国人は、はっきりと主張するという認識が強いようだが、必ずしもそうとは言えない。婉曲な物言いも少なくないし、中国語自体が曖昧な言語であるということも指摘できそうだ。従って、しばしば中国人労働者の意識を誤解または誤認することがある。 このとき、エグゼクチブがうまくコミュニケーションを取れるか否か、どのようなリーダーシップを発揮することができるか、会社の将来性を労働者にしかりと説明できるか否かと行ったことも問題となるだろう。これによって中国人労働者は、自らの職場および生活の場におけるライフステージが描けるようになるからである。これが描けないと転職という道を選択することになる。 労働者の離職率が高いことは、企業にとっては大きな損失になる。人材育成にかけたコストが無駄になるからである。そこで、企業としては、労働者の離職率低減のための方策を講じる必要がある。魅力ある企業になることが必要であろう。 人事労務管理制度を改革する際にも上述した注意が必要である。資生堂は、中国事業の成長率が競合企業に比べて落ちていることから、2015年8月に人事制度、報酬制度、販売体制の見直しを行った。トップダウンで関係者の意見をよく聞くことなしに改革が行われたようだが、これに対して従来の販売責任者を中心とする反発が非常に大きかった。 中国現地法人の人事労務管理をうまく行い、ビジネスで成功するためには、随分と前から認識されていることであるが、安い労働力確保というだけを目的とすることなく、イノベーションを図るアイデアを出せるクリエティブな人材の発掘、育成、および企業内の良好なコミュニケーションづくりがますます重要になる。
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