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(2016年8月24日)
国務院国有資産管理委員会、財政部及び中国証券監督管理委員会は、2016年8月2日に「国有持株混合所有制企業が従業員持株の試行を展開することに関する意見」(以下、「意見」という。)を発布した。 2014年下半期から国有持株上場会社における従業員持株制度の試行が始まっている。現時点で9社がすでに実施し、47社が株主総会で同制度の実施が採択され、9社が取締役会で計画案が承認されている。 従業員持株制度は、企業統治を強化し、優秀な人材を確保し、企業改革を進める上での重要な手段となっている。ただ、一方で株式を保有している従業員数が過剰となり、新たな“大鍋飯”(大釜の飯を食べる。親方五星紅旗)になっており、さらには持株の譲渡で不当な利益を得、国有資産が流失しているのではないかとの懸念、問題点が指摘されていた。 これらのことを考慮して今回の意見が発布された。意見では、(1)試行を認める企業の要件、(2)従業員の要件、(3)持株の方式などが具体的に規定された。 (1)企業については、@—a.競争のある業界の商業企業であって、株式構造が合理的で、非公有資本の株主が一定比率あり、@-b.取締役に非公有資本の株主が推薦した取締役がおり、@-c.企業統治がしっかりしており、@-d.営業収入及び利潤の90%以上が企業集団外部から得られている企業で、A有能な技術者の割合が多い科学研究所、ハイテク企業、科学技術サービス企業が当面の対象となる。 (2) 従業員については、重要なポストに就き、かつ企業の業績に直接・重大な影響を及ぼす科学研究者、経営者及び管理職に限られる。また、党中央、国務院及び地方党委員会、政府、並びにその部門、機関が任命した国有企業のトップは持株の適用が認められない。 (3)持株の方式については、持株は主に現金で行い、従業員持株の株式総数の30%を超えてはならず、1人の従業員の持分は同1%を超えてはならず、国の持分が34%を下回らないようにしなければならない。従業員持株は、36ヶ月は譲渡してはならず、その後は譲渡する場合でも毎年25%超の譲渡は認めず、会社を離職する場合には12ヶ月内に持分を内部に譲渡しなければならない。 現時点で従業員持株を試行する中央企業は決まっていない。この意見の発布により、企業改革が進展するか、従業員持株制度が拡大するか否か、企業統治が改善するかと問われれば、筆者は否定的である。第一に、企業が進んで試行企業になりたいというところはないだろう。中央政府の指示で試行企業になってもうまく機能するとは思えない。第二に、従業員持株の運用規制が厳しく、持株のメリットがあまりなさそうである。企業改革、企業統治ということでは、会社の機関設計の改善、企業文化の改善、従業員のコンプライアンス、会社の社会的責任の意識などを確立し、企業・社会で共有することの方が機能すると考える。
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