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Last Update:2016/09/14
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第315回 中国のパートナーシップ外交

China’s partnership diplomac

(2016年9月14日)

  習近平国家主席は、G20杭州サミット閉幕の辞において、「我々は緊密なパートナーシップ関係を築き、同舟相救うパートナーシップ関係及びパートナーシップ精神は20カ国の最も貴い宝である。」と述べた。
  現在、80余カ国・機関とパートナーシップ関係が築かれているそうだが(江原規由「中国外交の要となった“一帯一路”構想の推進と“伙伴関係”の構築」国際貿易と投資、2016年秋号、第28巻第2号、56頁)、パートナーシップ関係とはいかなる概念であり、中国はこれをどのように機能させようとしているのか、本当に機能するのだろうか。
  パートナーシップ関係とは、1990年代後半から使用され始めた外交用語であり、曖昧な概念である。パートナーシップ関係には、枕詞が17種類もある(同前:江原論文)。様々な枕詞があるが、王巧栄・当代中国研究所研究員によると、これには上下関係があるわけではなく、協力(中国語では、「合作」という。)の分野、程度及び方式により使い分けられているとのことである。日本との関係では、1998年11月に江沢民国家主席(当時)が訪日した際に「共同声明」で21世紀に向けて平和と発展のための友好合作パートナーシップ関係を築こうと述べている(現在では日本との間でパートナーシップ関係という言葉は使われなくなっているようである。)。
  中国が言うパートナーシップ関係は、WTOやTPPのようなグループを作るものではなく、あくまで二国間で形成する互恵平等な協力関係であり、共同で第三国に対抗しようとするものでもない。
  パートナーシップ関係という概念が出てきた背景には、中国社会の不安定要因がある。例えば、東西の成長率格差及び所得格差、国有企業改革で生じた大量の失業者、貧富の格差などである。こうした問題を解決するためには国力をつけ、経済発展を図らなければならない。このときに国際的に安全なビジネス環境を作り、広範な協力関係を形成したいということがあった。「中国脅威論」がささやかれる中で、これを打ち消したいという思惑があるようである。中国は、建国以後、独立自主外交を行ってきた。いかなる大国の圧力にも屈することなく、依存することもないというものである。この延長線上に二国間のパートナーシップ関係ということがありそうでもある。
  パートナーシップ関係は今後強固になり、機能するだろうか。このためには幾つかの意識改革が必要である。海外投資(走出去)も随分と行われているが、地域経済保全、会社の社会的責任を十分に果たしていない投資で受入国・地元住民・企業とコンフリクトを生じていることもある。こうした問題に向き合う必要がある。国際機関で形成されている秩序を尊重し、守ることも求められる。威権外交はいつまでも認容されないだろう。外国のシンクタンク研究者は、日中関係、米中関係を改善することも必要であると指摘している。米国との関係では「新型大国関係」と言っている。このような言い振りについても慎重である必要があるのかも知れない。

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