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Last Update:2018/1/24
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コラム『チャイナウォール』-中国人の法意識-

 第348回 民主主義 v. 権威主義

(2018年1月24日)

  民主主義の対立概念にあるのが権威主義である。原田教授は、“政治の論理が、一面において「権力の論理」であるかぎり、……何人も支配されるよりは、支配することに本能的な関心を寄せる。」という(原田鋼『政治の倫理』実業之日本社、昭和23年、22頁)。
  このときに権力者に何が起きるだろうか。権力者は、民主主義の名において独裁を正当化する論法を述べることになる。このことは独裁政権ばかりでなく、議会制民主主義においても生じ得ることである。
  今の反腐敗闘争は、腐敗して富の独裁を図っている者を倒そうとするものである。為政者又は権力者は、庶民の味方を標榜し、庶民の意思を実現しているように見える。そうであるので、庶民は彼らの意思が実現されていると評価する向きが少なくない。しかし、往往にして、実は為政者自らの権威を得るためのものとなりがちである。
  建前は共産党の指導であっても、個人崇拝が高まり、集団指導が個人指導にすり替えられたのが文化大革命であった。文革当時の実権派を打倒するというスローガンは、今日の反腐敗闘争と共通するものがある。ここに今の反腐敗闘争の危うさがある。
  今の権力者が、「軍幹部は党に忠誠心を示せ」、「各分野で戦闘準備に備えよ」、「死を恐れるな」といった重要講和をしている。権威主義がますます嵩じている。
  2017年12月に北京で農民工の子女のために開校されていた学校が閉鎖され、撤去されたことが伝えられた(New York Times, December 1, 2017)。北京では、個人経営の100以上の移民学校があり、数十万人の生徒がここで学んでいると言われる。2017年に閉鎖又は解体された学校数は数十にのぼる。学生数は1万5,000人いるが、その 多くは12歳未満の子供である。彼らが教育を受ける権利を剥奪された。さらに中国全国の都市には2億人以上の移住者が暮らしている。約3,800万人の子供たちが教育を受ける上での大きな障害に直面している。
  沿海都市の経済発展は、農村、農民からの資源搾取により遂げられてきたのではなかったのか。都市部のインフラや社会サービスへの負担が増えているところ、農民工を都市から追い出そうというキャンペーンが全国で展開されている。市民を一級市民と二級市民に分類しているようだ。
  市民は、監視社会に暮らす。今の中国は、人民民主を原則とする社会主義体制も崩壊させそうである。その最たるものが、国家監察委員会の設置であり、監察法の制定である。中国共産党は、警察などあらゆる組織や制度を通じて市民の信用情報(格付けシステム)を集めようとしている。
  文化大革命が終わった時には、人々は快活で、明るく、物怖じすることない解放感を味わっていた。しかし、今、人々は警戒心、猜疑心、恐れを感じ始めているのではないか。

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