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Last Update:2017/11/8
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第343回 社会矛盾を予防する社会治理

(2017年11月8日)

  2017年11月4日に広州において「第二届社会治理亜洲論壇」(The Second Social Governance Forum for Asia)が開催された。主催者は、北京市信訪矛盾分析中心(Beijing Institute of Letters to Government)で、協賛者が中山大学政治与公共管理事務管理学院であった。第2回フォーラムの共通テーマは「社会治理対社会矛盾預防的経験総結与創新」(Experience Summary and Innovation of Social Governance on Social Contradiction Prevention)であった。
  「信訪」とは、公民、法人またはその他の組織が、書簡、電子メール、ファックス、電話、訪問などの方式で、国家機関に対して状況を説明し、建議および意見を提出し、または苦情を申し立て、関係国家機関が法に従ってこれを処理する活動をすることである。日本の苦情処理制度や行政相談制度に近い制度である。
  フォーラムには、中国の全国各地の大学から行政法学者や公共関係に関する政治・社会学者が参加し、また、海外から台湾国立中正大学、台湾国立台北商業大学、香港中文大学、オーストリア・ウィーン大学、シンガポール南洋理工大学、ラオスLuang Namtha師範大学、オーストラリア・Deakin大学、タイPanyapiwat管理学院、及び筆者の9名の学者が参加した。 筆者は、「日本の行政調停制度」について発表する機会を得た。
  先の中国共産党大19回大会において「新時代の中国の特色ある社会主義」という概念が新たに出てきたが、同時に新時代の「新矛盾」がある。中国共産党は、社会治理、国家治理をする決断をし、社会治理現代化を図ろうとするが、このとき新矛盾の解決に資する重要な制度として「信訪」が考えられている。一般に苦情や紛争処理は、事後処理が中心になる。しかし、何とか予防法務的な対応ができないか否かが最近の課題である。日本では「行政相談」がある。これも問題が生じた後の苦情相談であるが、ある中国人学者は日本語の「相談」という言葉がいいと言っていた。事後処理というよりも予防法務的な概念あると感じられたようである。
  フォーラムでは、今日の中国における大きな問題として、農村の貧困問題、流動人口問題、インターネット・ソーシャルメディアといった情報化の進展、一般市民の権利意識(人身の自由、移動の自由、通信の自由など)の拡大などが取り上げられた。これに対して行政機関の縦割り行政(中国語で「条々塊々」)の存在などが障害になっているとの指摘もある。
  今、「社会健康」という新しい概念も提唱されている。今後、一層の法治を進めることになるが、このときにあまりに杓子定規にならない柔軟な対応も求められることになるだろう。

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