コラムに関する感想
お問い合わせ
Last Update:2017/9/13
トップチャイナウォール
コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第339回 米ニューバランスが商標権訴訟で勝訴〜知財権に関する判断基準は変わるか

(2017年9月13日)

  蘇州中級人民法院は、8月23日に米ニューバランス(New Balance、中国語の企業名は「新百倫」)が、中国企業が同社の「N」ロゴを不正に使用したとして商標権侵害で訴えていた訴訟の判決を下した。判決は、中国企業は不正に「N」ロゴを使用し、消費者をして本物のニューバランスと誤認させようとした悪意があり、中国企業は米ニューバランスに150万ドルを支払えと命じた。
  被告の中国企業は、(1)鄭朝忠(個人)、(2)新平衡運動体育用品有限公司及び(3)斯達克貿易有限公司であり、それぞれがNew Boom、New Barlun、New Bunrenというブランドで販売していた。これらは中国で商標登録が認められたものであった。それでも、米ニューバランスの主張が認容されたことにこの判決の意味がある。
  米ニューバランスは、1995年に中国市場に進出して以来、商標権に関する紛争が絶えない。この紛争の中で米ニューバランスは、商標権侵害訴訟で常に勝訴してきたわけではない。
  2015年4月には、広州中級人民法院が、広東省靴メーカーを経営する周某倫が登録している「新百倫」の商標権を米ニューバランスの販売会社「新百倫貿易(中国)」が侵害したとして、賠償金9,800万人民元の支払いを命じる判決を下したことがある。この案件は、米ニューバランスが上訴し、現在、最高人民法院で争われている。
  2016年5月には米ニューバランスが中国の運動靴メーカー「紐巴倫(New Barlun)」の商標を侵害しているとして米ニューバランスに75万ドルの支払い命令判決が下された。
  中国のニセモノには、さまざまな態様があることは周知のとおりである。主には、以下の3つに分類できる。
  @外装、デザインともそっくりな「ニセモノ」。
  Aブランドのみの使用=正規の会社の商品ラインには存在しない商品を「新製品」として発売する。ただし、生産企業はニセモノ業者名であるというもの。
  B生産企業の名称も、正規の会社名を記載して「ニセモノ」を生産。
  商標権侵害訴訟は後を絶たず、ニセモノにも上述のような各種類型があるので、外国企業としては、訴えの技法をどうするかも悩ましい。
  ただ、本件の判決は、中国が知的財産権の保護戦略を打ち出したものであると評価できる。商標権侵害に対して認められる損害賠償額も高額になってきている。中国政府は、ニセモノを摘発され、損害賠償をしてもニセモノを販売していた方が利益が大きいという状況に歯止めをかけようとしている。
  李克強首相は、2017年8月に中国の代表的50製造業を中南海に招請し、「中国政府が発給した工業ライセンス数は世界で最も多いのに、中国が主導した国際基準は世界の1%しかない。……製造業は技術革新し、アップグレードしなければならない。」と述べた。中国政府は、このためにも外国企業の知的財産権を正当に保護しなければならないのではないか。

※サイトの記事の無断転用等を禁じます。


© Copyright 2002-2016 GLOVA Reserved.  
"chinavi.jp" "ちゃいなび" "チャイナビ" "中国ナビ"はGLOVAの商標です。
s