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Last Update:2017/7/26
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第336回 政府の遵法と社会の遵法

(2017年7月26日)

  今、中国で2013年の北京大学光華新年論壇における呉志攀・北京大学副学長の講話が話題になっている。呉志攀は、中国人には社会的責任感がいささか欠乏しているが、社会的責任において重要なことは法律を遵守することであると言う。また、中国には縦向きの信任、すなわち市民は、中央、政府、国有企業を信じ、家族においては父母、年長者を信じるということがある。しかし、横向きの信任が欠如している。同じ集団に属さない者、知らない者同士の信任がない。このような課題の解決策は何か。呉志攀は、社会・人心の安定を図り、団結し、民族復興という中国の夢を真意実現しようとするならば、まずは政府が法を遵守することであり、そうして初めて市民が法を守ることになると言う。
  2017年7月18日、19日の両日、北京において第8回「信訪工作会議」が開催された。「信訪」(Letters to Government)とは、信訪条例2条によれば、「公民、法人またはその他の組織が、書簡、電子メール、ファックス、電話、訪問などの方式で、国家機関に対して状況を説明し、建議および意見を提出し、または苦情を申し立て、関係国家機関が法に従ってこれを処理する活動(をする)」ことである。日本では、苦情処理制度や行政相談制度(China’s Administrative Counseling)というような概念になる(「陳情」という翻訳を見ることがあるが、これは必ずしも正確な概念を理解した訳ではない。)。
  信訪業務は、市民の社会生活上の悩みや課題に対して、政府と市民の架け橋となり、市民の適法な権益を法により保護することである。現在、中央の各政府部門に信訪部門が設置され、市民のクレームや相談に応じ、一定の成果を上げている。2016年には全国の信訪件数が2013年より23%減少したと伝えられている。このことは、市民がが信訪を利用するより以前に政府が課題を発見し、問題への対策を講じているということの証左のようである。
  2017年7月21日の人民日報は、次のような習近平の信訪の実践を伝えている。
  “習近平が1991年4月13日にまだ福建省で勤務していた時に、ある中学校教師が校舎の安全性に問題があるという相談を受けた際に「校舎に問題があれば直ちに解決しなければならない。別の校舎を探し、移転し、危険を取り除くことを第一にしなければならない。」と言い、地元政府の財政補助により危険な校舎は取り壊され、移転し、教師・学生の生命の安全が保障された。”
  中国共産党第19回党大会を前に「改革を徹底的に行う」(将改革進行到底)を主題に全10集からなるテレビ番組が中央テレビにより組まれ、放送が始まっている。改革を進めるにあたっては、中国共産党・政府が法律を遵守することから始める必要がある。

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